第92話 十二月三十一日は大晦日
一年の終りの日。
月末のことを晦日(みそか)・晦(つごもり)と言い、年末の最後の晦日なので大晦日・大晦という。「みそか」は三十日の意、「つごもり」は月篭りが転じたもので、旧暦では毎月一日が新月であり、その前日を「つごもり」と呼んだ。
「年越しそばが出来たよ」
「ありがとう。凄く美味しそう」
私がコタツに年越しそばを置くと、夫が少し横に移動して場所を空けてくれた。
結婚して初めての年越し。お互いの実家には二日から挨拶に行くことにして、今年は二人っきりで大晦日と元日を過ごす。
二人しか居ないからコタツも広く使えば良いのに、私たちは狭いのにわざわざ並んで座った。窮屈なんて二人には関係ない。だってラブラブだからだ。
「いただきます」
二人で揃って食べ始める。
「忙しくて観て無かった、Mー1かシンウルトラマンでも観る?」
「うーん、どっちも観たいけどね……」
夫の提案も良いんだけど、今年だけは観たいものがあった。
「紅白歌合戦を観てみない?」
「紅白? 観たい人が居ない訳じゃないけど、興味のない人の方が多いからなあ」
「私もそう。でも、今年だけは紅白観たいかなって」
「今年だけ? どうして?」
「私たち夫婦の初めての大晦日でしょ。大晦日の象徴的なことをしたいのよ」
「なるほど、それ良いね。じゃあ紅白観よう」
夫は私の提案に同意してくれた。
私たちは年越しそばを食べながら紅白を観るという、日本人らしい大晦日を過ごした。
食べ終わってからも、コタツで寄り添いながら観続ける。
二人だけの幸せな大晦日。何年後でも思い出せるように、しっかりと心に刻んでおこう。これから二人に困難が起きても、この幸せを思い出せば乗り越えて行けるように。
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