第217話 五月五日はおもちゃの日
日本玩具協会・東京玩具人形問屋協同組合が一九四九(昭和二十四)年に制定。
端午の節句に因み、おもちゃや人形のPRの為に設けられた。
ゴールデンウイークに家の片付けをしていたら、押入れから昔次男がよく遊んでいたソフトビニールのヒーロー人形が何体か出て来た。ウルトラマンや仮面ライダーの人形で、俺がリサイクルショップで袋詰めで売っていたのを買ってきた物だ。
「ほら、こんなの出て来た。捨てて無かったんだな」
「ホント。懐かしい」
妻に見せたら、彼女も覚えていたようだ。
「これ、陽司が遊んでたおもちゃだよな」
「そう、いつもあの子はこれで独り遊びしてたよね」
そうなのだ。次男はこれらの人形を使って、独りで戦いごっこをして遊んでいた。俺と妻はその姿を、離れたところから眺めているのが好きだった。「バーン!」「ドカーン!」と口にしながら、両手で持った人形を戦わせて熱中して遊んでいた。
親が見ているのに気付けば、次男は恥かしくなって止めてしまう。なので、気付かれないように、こっそりと覗き見するのだ。
昔から次男はマイペースで独り遊びが好きだった。だからと言って、俺も妻もお友達と遊びなさいとは言わなかった。次男が遊ぶ後ろ姿を見ていると、彼の頭の中にはいろいろな世界が構築されているのが分かり、その想像力をどんどん伸ばして欲しいと思っていたからだ。
今はもう成人して就職し、家を巣立って行った次男。今の仕事にその想像力が活かされているかは分からない。未だにマイペースでソロキャンプが好きな次男だが、ちゃんと友達も多いし、草野球のチームにも入っているようだ。何の心配も無く優しく立派な大人になってくれた。明日には帰省してくる予定になっている。この人形を見せて、昔話に花を咲かせようと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます