第134話 二月十一日は建国記念の日
「建国をしのび、国を愛する心」を養う国民の祝日。
一九六六(昭和四十一)年から国民の祝日になった。
この日はかつて「紀元節」という祝日だったが、戦後になってこの祝日は廃止された。一九五一(昭和二十六)年頃から復活の動きが見られ、一九五七(昭和三十二)年以降九回の議案提出・廃案を経て、一九六六(昭和四十一)年に、日附は政令で定めるものとして国民の祝日に追加された。
建国記念の日の日附については内閣の建国記念日審議会でも揉めたが、十人の委員のうち七人の賛成により、二月十一日にするとの答申が一九六六(昭和四十一)年十二月八日に提出され、翌日政令が公布された。
「建国記念日」ではなく「記念の日」なのは、建国された日とは関係なく、単に建国されたということを記念する日であるという考えによるものである。
「そう言えば、今日は一日損したね」
デート中にカフェでお茶を楽しんでいると、彼女が拗ねた感じで呟いた。
「ええっ! 今日のデートが嫌だった?」
「そういう意味じゃないの。今日は祝日と土曜日が重なったのに、振替休日がないでしょ? 本来なら三日休めたのに、土曜日は振替休日が無いから、通常通り二日しか休めないじゃない。休みを一日損したなって」
「そういうことか」
俺は理由を聞いて、ホッとした。
俺達は付き合いだして、まだ一か月。俺の方が土下座する勢いで頼み倒して付き合いだした関係だ。デートもまだ三回目。彼女の発言を聞いて、俺のことが嫌になったのかとビックリしたのだ。
「もう祝祭日は、全て近くの月曜日にすれば良いのに。今回だったら二月の十一日じゃなく、第二月曜日とかさ」
「まあ、気持ちは分かるけどさ。今日は建国記念日で、紀元前六百六十年の二月十一日に初代天皇である神武天皇が即位された日だから動かしようが無いよ」
俺は今朝ネットで仕入れた知識を披露した。
「それは間違いよ。今日は建国記念日じゃなく、建国記念の日なの」
「えっ? どういうこと? 同じ意味じゃないの?」
俺は意味が分からず、彼女に聞いた。
「紀元前三百三十年って、神話の世界の話でしょ。ハッキリとした歴史上の日付じゃないので『記念日』じゃなく、『記念の日』ってぼやかしているのよ。でもそんな曖昧な日なら、別に第二月曜で良いと思うのよ。建国記念日じゃなく、建国を記念する日なんだから」
「なるほどねえ……」
彼女の話に一理あるように思えて来た。
「日本人らしいって言えば日本人らしい話よね。別に『記念日』にしても文句を言う人なんて居ないと思うのに」
「でも、俺はそういう曖昧なところも含めて、日本人が好きだな。自己主張が激しい人ばかりじゃ対立して疲れるでしょ。曖昧な部分はぼやかして対立を防ぐのも、一つの優しさだと思うよ」
俺の言葉を聞いて、彼女は何も言わずにミルクティーを一口飲んだ。
「確かにそうかもね。私も反省しなきゃ。思ったことすぐに口にしちゃうから、よく他人と衝突しちゃうからね」
「いや、美嘉《みか⦆は素直なのが魅力だからそのままで良いよ。それにそうやって反省できるんだから、今のままで大丈夫だって」
彼女が悲しそうな顔をしてたので、慌ててフォローした。
「それじゃあ、私は日本人らしくないみたいじゃない」
「良いの。俺が対立しないように合わせて上手く行くんだから」
「ホントそうね。あなたほど、私と気が合う人も居ないわ」
「そう。日本人らしく、和の精神で行きましょう!」
本音をぶつけ合うのも大事だけど、和の精神で上手く人間関係を築くのも大切なことだと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます