第125話 二月二日はおじいさんの日

 伊藤忠食品が制定。

 「じい(二)じ(二)」の語呂合せ。あわせて八月八日を「おばあさんの日」としている。



「じいじ、あそぼう!」


 法事で実家に親族が集まっている中、兄の孫の陽司が俺の腰にしがみ付いて来た。


「陽司、その人はじいじじゃ無いでしょ」

「えっ?」


 陽司は驚いた目で俺を見上げる。


「残念だったな。ワシは偽じいじだ」

「ええっ! ニセじいじ?!」


 俺が少し怖い声で冗談を言うと、陽司は目を丸くした。

 陽司は今四歳。何回か会ったことはあるのだが、まだ幼過ぎて覚えていないのだろう。


「どうだ? 偽じいじと遊ぶか?」

「うん! ニセじいじとあそぶ!」

「よし、高い高いだ!」


 俺は陽司を頭の上に持ち上げた。陽司はキャッキャ、キャッキャと喜んで声を上げる。


「叔父さん、ごめんね」

「いや、構わんよ。俺も楽しいから」


 二、三回上げ下げして陽司を降ろした。


「ねえ、ニセじいじはどうしてニセじいじなの?」

「偽じいじにはまだ孫が居ないからな。孫が出来たらじいじになるよ」

「そうか……はやくマゴができるとイイね」


 孫か……。兄の孫でさえこれほど可愛いのに、自分の孫ならどれほど可愛いのだろうか。

 俺にも息子と娘の二人の子供が居るが、孫はまだだ。息子はもう結婚しているが、まだ子供は居ない。娘の方は自由気ままに暮らしていて、結婚願望があるのかさえ分からない。

 だが、俺は子供たちに、孫や結婚を催促しようとは思わない。子供たちがどう生きれば幸せになれるのか、自分達で判断すれば良いと思っているからだ。子供が居なくても、夫婦仲よくずっと暮らして行けるならそれで良い。独身でも人生を謳歌出来るならそれで良いんだ。親が成人した子供にとやかく言うべきでは無い。


「ねえ、ニセじいじ、もういっかいタカイタカイして!」


 俺の腰にしがみついて、陽司がねだる。


「おお、良いぞ。何度でもやってやる」


 俺はもう一度、陽司を持ち上げた。

 でも、案外一年後にはじいじになっていたりするかもな。それはそれで、とても嬉しいだろう。もし、孫が出来たなら、目いっぱい遊んで、お爺ちゃん子にするつもりだ。

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