第131話 二月八日はにわとりの日

 福岡県福岡市に本社を置き、九州北部で銘柄鶏「華味鳥」(はなみどり)を育てているトリゼンフーズ株式会社が制定。

 ふだん何気なく食べている鶏肉も、命をいただいているという意識を持ち、鶏に感謝する日とするのが目的。

 日付は二と八でにわとりの「に(二)わ(八)」と読む語呂合わせから。



 今日の晩御飯は、夫のリクエストで鶏の唐揚げだ。夫の大好物なので、家では三日に一回は晩御飯に唐揚げを食べている。これで夫が肥満気味だったら私も止めるけど、スポーツマンで今でも学生の頃の体形を維持しているから何も言えない。子供が出来たら食育の関係で変えなくちゃいけないけど、今は良いかと我慢している。

 夫の凄いところは、鶏の唐揚げなら何でも喜んで食べることだ。グランプリ金賞店の唐揚げでも、私の作った唐揚げでも同じように喜んで食べる。なんなら、最初から衣が付いている冷凍食品の唐揚げでも喜ぶのだ。こちらとしては楽で良いのだけれど、それで良いの? って思いもある。


「美味し―! ありがとう。美味しい唐揚げ作ってくれて」


 今日も夫は、唐揚げを食べて満面の笑顔でお礼を言ってくれる。なんだかんだ言っても、夫の幸せそうな笑顔を見ているのが好きだ。だから私自身は飽きていても、唐揚げを作ってあげている。


「あなたって、本当に唐揚げが好きだよね」

「うん、そうだけど、そもそも唐揚げが嫌いな人っているの? 町中にも専門店が多いし、コンビニにも必ずあるしね」

「確かにそうね。でもあなた程唐揚げだったら何でも喜んで食べる人も珍しいと思うわ。専門店の唐揚げと冷凍食品の唐揚げじゃ味が違うでしょ?」

「俺にとってはどちらも美味しい唐揚げだよ。どっちを食べても幸せになれるんだ」


 夫は笑顔で胸を張る。


「どちらでも幸せになれるんだったら得よね」

「そう、その通りだよ。俺は食べ物と幸せのハードルは低い方が得だと常々思ってるんだ」

「ハードルが低い?」

「うーん、そうだな。ぶっちゃけた言い方すると、お金を掛けなくても満足出来るってこと。

 簡単なこととか、安い物とかでも満足できる人は得なんだよ。贅沢を追求しだしたらキリが無いからね。冷凍食品で美味しくないと不満を感じるより、満足できる方が得だろ?

 プレゼントでも高価なブランド物しか満足出来ない人より、心がこもっていれば百円の物でも喜べる人の方が得なんだよ」

「なるほどねえ……」


 確かに夫は高級品志向では無いし、安価なものでもいつも喜んでくれる。そんな夫を見ているとこちらまで幸せになれるので、私は結婚を決めたんだ。


「そうか。そうだよね。小さなことでも幸せと感じられる人の方が絶対に良いよね」


 私は夫の意見に共感した。


「嬉しいな。俺の考えを理解してくれて」

「私も不平不満を無くして、幸せのハードルを下げるように頑張るよ」


 私がそう言うと、夫は唐揚げを食べながらサムズアップしてくれた。

 私たちの間に生まれてくる子供も、夫と同じような感性だったら良いな。きっと笑顔の絶えない家庭になるだろうから。

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