第204話 四月二十二日はよい夫婦の日

 講談社が一九九四年に制定。

 四(よ)二(ふ)二(ふ)で「よいふうふ」の語呂合せ。



「ねえ、よい夫婦ってどんな夫婦だと思う?」


 嫁さんと家で一緒に夕飯を食べていたら、急にそう聞かれた。きっと今日がよい夫婦の日と何かで知ったからだろう。


「うーん、とりあえずは、お互いに愛し合ってるのが大前提じゃないか」

「そっか、じゃあうちは大丈夫だね!」


 嫁さんがそう即答してくれて嬉しい。俺はもちろん嫁さんのことを愛している。それがちゃんと伝わっていて、嫁さんの方もそうだと言ってくれているのだから。


「でも、愛し合っていても喧嘩してしまうとか、別れてしまうとかあるみたいだよ」

「それ、どこの情報?」

「漫画とかドラマ」


 うーん、それを鵜呑みにしてしまうところが、うちの嫁さんらしい。


「喧嘩したり別れたりするって、価値観が違うのが原因じゃないかな。いくら愛し合っていても、考え方や感じ方が違うと、一緒にいても合わないことが出て来そうだし」

「そっか、うちはどうかな?」

「うちか……そうだな……」


 よく考えてみると、うちは価値観が同じとは言えないかも知れない。嫁さんは結構天然で、とんでもないこと言い出したりするから。


「同じとは……言えないか……」

「ええっ、じゃあよい夫婦じゃないの?」


 嫁さんが、がっかりして泣きそうな顔になる。


「いやいや、そういう訳じゃなくて……何て言うか、俺達は価値観が違うところも楽しめているから良いと思うんだ。お互いに自分の価値観を押し付け合うんじゃなく、違いを認めて、それも楽しんでいるんだよ」

「そっか、じゃあ価値観が違っても良いんだね」

「まあ、価値観が同じに越したことはないけどね」

「うーん、結局、よい夫婦ってどういう夫婦なんだろね?」


 嫁さんは考え込んだ。その顔が真剣で、妙に可笑しくなる。


「俺と一緒に暮らしていて楽しい?」

「うん、もちろん楽しいよ」


 嫁さんは笑顔で頷く。


「それが十年後も二十年後も続くのがよい夫婦じゃないかな。だからずっと続くように頑張ろう」

「じゃあ、私達はよい夫婦だね。だって、一緒に居て楽しくなくなるなんて考えられないもの」

「確かにそうだな」


 深く考えなくても、俺達は絶対によい夫婦だ。こんなに楽しい毎日がそう証明してくれているからな。

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