第203話 四月二十一日は民放の日
日本民間放送連盟(民放連)が一九六八年に「放送広告の日」として制定。一九九三年に「民放の日」に改称した。
一九五一年のこの日、日本で初めて民放十六社に放送の予備免許が与えられ、翌一九五二年のこの日に民放連が発足した。
俺は駅前の居酒屋で、高校時代からの親友である高橋と久しぶりに飲んでいる。俺達はもう五十代半ばだ。高橋とはもう四十年の付き合いが続いている。
飲みながら昔話に花を咲かせてたら、子供時代に流行っていたテレビの話題になった。
「昔は必ず毎週観るっていう番組が結構あったよな」
「そうだな。『オレたちひょうきん族』とか毎週観てたな」
俺が話を振ると、高橋も番組名まで出して乗って来た。
「おお、俺も観てたよ。毎週月曜日はひょうきん族の話で盛り上がってたよな」
「音楽番組は『ザ・ベストテン』な」
高橋は冷酒を一口飲んでそう言う。
「あんな高視聴率の音楽番組があったから、昔はヒット曲を全世代が知ってたよな」
「ピンクレディーなんか振り付けも出来たぞ。『UFO』の出だしなら今でも踊れるぐらいだ」
高橋はおどけて、頭の後ろに手の平を出す。高橋が特別な訳じゃない、多分俺達世代ならみんな踊れると思う。
「ドラマも面白いの多かったよな。『スクールウォーズ』なんか毎週楽しみにしてたよ」
「ああ、あれももう再放送は無理だろうな。部員並べて殴るなんて、体罰以外の何物でもないからな」
確かに高橋の言う通りだ。今は体罰なんてしたら新聞沙汰になって、顧問は辞任騒ぎになる。
「しかし最近テレビって観なくなったよな」
「ホントだな。もうスポーツ番組しか観なくなったよ」
俺の言葉に高橋も同意する。
「あれだな。今は少しのことでもすぐ炎上するから、無難なことしか出来なくなって面白くなくなったんだろうな」
俺は鯛の刺身を食べてそう言った。
「まあ、でも炎上も悪いばかりじゃ無いぜ。人を小馬鹿にして笑いを取るのが駄目という風潮になって来たのは嬉しいよ」
「それは俺も思うよ。あんなのパワハラみたいなものだったからな。不愉快な笑いを取る奴がいなくなったら、苛めも減るんじゃないか」
俺はグラスの焼酎を飲んでから、高橋の言葉に同意した。
「しかし、俺達も昔を懐かしむ歳になったんだな……」
高橋が枝豆をつまんで、しみじみと呟く。
「ああ、学生時代には考えられなかったけどな」
「今の若い奴らも三十年後には昔を懐かしむのかな」
「そりゃあ、そうだろ。俺達の若い頃も、おっさん達は昔を懐かしんでたと思うよ」
三十年後の世間はどう変わっているんだろうか? テレビなど無くなっているのかも知れない。
「まあ、三十年後にもこうやって、お前と飲みながら昔を懐かしんでみたいもんだ」
俺はそう言って、グラスを高橋に差し出す。
「そんなこと言って、先に死ぬなよ」
高橋はそう言うと、自分のグラスを持って、俺のグラスに当てる。
「お前こそな」
俺達は笑顔で、グラスの中の酒を飲み干した。
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