第119話 一月二十七日は国旗制定記念日

 一八七〇(明治三)年のこの日、太政官布告第五十七号の「商船規則」で、国旗のデザインや規格が定められた。

 それまでは、船によってまちまちのデザインの旗を使っていた。

 当時の規格は、縦横の比率は七対十で、日の丸が旗の中心から旗ざお側に横の長さの百分の一ずれた位置とされていたが、現在は、一九九九年八月十三日に公布・施行された「国旗国歌法」により、縦横の比率は二対三、日の丸の直径は縦の長さの五分の三、日の丸は旗の中心の位置となっている。

 これを記念して国旗協会が制定。



 同棲している彼女が、コタツの上にノートパソコンを置いて、何やら熱心に眺めている。


「何を見てるの?」

「うん、世界の国旗を見てるの」

「世界の国旗? どうしてそんな物を?」


 彼女が国旗に興味があるとは聞いたこと無かったので、俺は理由を聞いてみた。


「今日は国旗制定記念日なの。それでふと思ったんだけど、日本の国旗って凄くシンプルじゃない。他にもこんなシンプルな国旗があるのか知りたくなったの」

「なるほどね。確かに日本の国旗ってシンプルだな。で、他の国に日本みたいなシンプルなのあった?」

「バングラディシュが緑地に赤丸だったけど、日本の方がシンプルな感じがするね。だって日の丸って白と赤の二色だけど、白は下地だから実質赤丸だけだもんね。ヨーロッパの主要国も三色の組み合わせでシンプルだけど、日の丸程じゃ無いしね」

「そうか。日の丸って世界的に見ても異質なのかもな」

「でね、凄い国旗がいろいあるの。これなんか見てよ」


 彼女はそう言うと、サンマリノと書かれた国旗を画面に大きく表示させた。


「このサンマリノって国の国旗は、中央に国章が描かれているんだけど、それが凄く複雑なの。盾の中に三つの丘と三つの塔が描かれてて、盾の上には王冠、横にはリース、下にはラテン語で『自由』と書かれたリボンがあるのよ。これ国民でもちゃんと描ける人が何パーセント居るんだろう」


 そう言われてみると、確かに複雑な国章が描かれている。


「本当だな。これかなり絵心が無いと描けないよね」

「あとね、中南米は青と白、アフリカは緑と黄色を組み合わせた国旗が多かったわ。地域性があるのかもね」

「へー、調べてみると面白いものだね」


 俺はいろいろ調べた彼女を、素直に感心した。


「思うんだけど、日の丸ってなんだか日本人らしいね」

「日本人らしい?」

「そう、人より目立つことを嫌って、控えめで謙虚を美徳と考えている日本人らしいと思うの。でも、世界的に見ればそれが異質だから逆に目立ってしまうとかね」

「なるほどね。そういう意味では似てるかも。日本人みたいに口癖のように『すみません』って言うのは、世界的に見れば異質だろうね」

「でも、それが悪いことのように言われる場合が多いじゃない。欧米ではどうのこうのとか。私はそれは違うと思うのよ。

 別に世界標準に合わす必要は無いよね。日本人は日本人の美徳と思うものを大切にすべきだと思う。サッカーワールドカップでサポーターが客席を清掃して帰った時、それを非難する人も居たけど、後になって他の国のサポーターも見習って清掃してた。良い行いは世界標準じゃなくても、みんな認めて称賛してくれるんだよ!」


 俺は熱弁する彼女に圧倒された。こんなに主張する彼女は初めてだ。


「あっ、私、暴走しちゃってた?」

「いやいや、凄く良い話だったよ。説得力のある話だったから、本当に納得した」

「ありがとう」


 彼女はホッとしたように笑う。


「和風や和食なんかの、和って言葉も凄く日本らしくて良いよね。自分を抑えてでも人と争わない日本人にピッタリな言葉だと思うよ」

「ホントね。どうして日本風なことを和風と言うのか知らないけど、これ以上ない言葉だね」


 俺の意見に彼女も同意してくれた。

 国旗の話からずいぶん逸れてしまったけど、面白い話だった。彼女の意外な一面も見れて良かった。だって彼女をもっと好きになれたから。

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