第82話 十二月二十一日はクロスワードの日
一九一三年のこの日、『ニューヨーク・ワールド』紙が日曜版の娯楽のページにクロスワードパズルを掲載した。それ以前からクロスワードは存在していたが、新聞の連載をまとめた本が一九二四年に刊行され、世界中にクロスワードパズルが広まるきっかけとなった。
「何やってるの?」
「うん? クロスワードパズル」
俺がリビングで雑誌に載ってたクロスワードパズルを解いてると、同棲している彼女の
「クロスワードパズル? それ面白いの? やったこと無いんだけど」
「俺は暇な時にやってるよ。一緒にやってみる?」
「うん、やるやる」
こうして二人でクロスワードパズルを解くことになった。
「じゃあ、まだ正解が分からないところ。タテの五番、一番上の文字は『マ』で四文字。ヒントは『背中がかゆい時に使う物』」
「『マ』で四文字ね……分かった! 『マイタケ』ね!」
「マイタケでどうやって背中を搔くんだよ!」
「使う人もいるかも知れないでしょ!」
前途多難な予感がした。
「ヨコの三番、四文字で二つ目が『イ』で最後が『ボ』でヒントは『規模が大きいこと』」
「分かった! 『カケイボ』ね!」
「どうして『規模が大きいこと』が家計簿になるんだよ!」
「だってお金持ちだったら家計簿の規模も大きいでしょ!」
だんだん手伝ってくれているのか、邪魔しているのか分からなくなってきた。
「次、ヨコの十三番、四文字で一番上が『カ』三番目が『ス』でヒントは『海にたくさんある物』」
「これは簡単、正解は『カニスキ』よ」
「カニスキは料理の名前だろ!」
「だってカニは海にいっぱい居るでしょ!」
こうしてワイワイガヤガヤ言いながらもクロスワードパズルを解いていく。
「さあ、最後の問題。タテの八番。五文字で一番上は『ア』二番目は『イ』、四番目が『テ』五番目が『ル』。ヒントは『LOVE』さあ、答えは?」
「えー私は分からないなー、ケンちゃん答えてよ」
「もう白々しいな」
「ねえ、答えてって」
甘えてもたれ掛かって来る紗耶香が可愛い。
「『ア、イ、シ、テ、ル』愛してる」
「なになに? もう一回!」
「紗耶香を愛してる」
「もー私も! ケンちゃん愛してるよ!」
とても他人には見せられないバカップルぶりだが、二人っきりだから良いのだ。俺は抱き着いてきた紗耶香を、ギュッと抱きしめた。
※ちなみに答えは「孫の手」「大規模」「海水」です。
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