第208話 四月二十六日はよい風呂の日
「よい(四)ふ(二)ろ(六)」の語呂合せ。
浴室に入ると、俺はシャワーで体全体にかけ湯してから湯船に浸かる。
「うーん」と思わず声が漏れる。足を伸ばせる大浴場も良いのだが、俺は体育座りしか出来なくても家のお風呂が落ち着く。トイレと同じプライベートスペースという意識があるからだろう。家のお風呂で、独りゆっくりお湯に浸かっている方が好きだ。
俺は毎日、食事を取ってからお風呂に入っている。晩酌する人は、お風呂に入ってから冷えたビールを飲むのが楽しいんだろうけど、俺は滅多に飲まないし、ご飯を食べると汗を掻く方なので、先に食事を取っている。
湯船で出来るだけ寝そべって肩まで浸かっていると、気持ち良過ぎて眠たくなってくる。もしこのまま寝てしまったら、溺れ死ぬんじゃないかと思う時がある。溺れたら誰か助けに来てくれるだろうか? 俺は長湯なので、気付いて貰えないんじゃないかと思う。そう思うと、怖くなってちゃんと座り直したりする。
妻と娘二人の四人家族なのだが、必ず俺が一番最初にお風呂に入る。それは別に家長だからとか、大黒柱だからという意味ではない。そんなに家での地位が高い訳じゃないし。俺以外の家族はお風呂に入浴剤を入れるのだが、俺は肌がかゆくなってしまう。だから、俺が一番最初に入って、次にお風呂に入る人間が、湯船に入浴剤を入れるのだ。
俺が入るお湯の温度は高めだと思う。ただ最初から高い温度で入る訳じゃない。初めはぬるいお湯で体を慣らし、熱いお湯を追加しながら温度を高めるのだ。この入り方が凄く良い。体とお湯が同化して行くような気がするぐらいだ。
のぼせるぐらいゆっくり浸かった後は、湯船から出て頭と体を洗う。順番はまず頭からだ。上から汚れを落として行くイメージだ。シャンプーのみ。リンスだのコンディショナーなどは使わない。汚れを落とせば十分だからだ。
頭と体を洗った後は、もう一度湯船に浸かる。今度は長い時間は入らない。出る前に体を温めるだけだ。
最後はきつく絞った濡れタオルで体を拭く。入念に水分を拭き取ってから浴室を出る。以上のルーティーンで俺のお風呂タイムが終了する。
「お先に!」
「もうーお父さんお風呂長過ぎ! もう待ちくたびれたよ」
お風呂から上がって気分良くリビングに行くと、いつも家族から文句を言われる。家のお風呂が大好きなのだが、これだけは玉に瑕だ。
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