第97話 一月五日はいちご世代の日
「いち(一)ご(五)」の語呂合せ。
高校受験を控えた十五歳の世代「いちご世代」にエールを送る日。
俺には十五歳の息子がいる。反抗期も無く、素直で優しい自慢の息子だ。
息子はこの春、高校を受験する。決して優秀とは言えないが、平均並みな成績を収めており、高望みしなければ公立高校に十分入れるレベルだ。だが、ここで一つ問題が出てきた。息子が高望みしたいと言い出したのだ。
息子が志望校として選んだのは、この辺りで一番の進学校。理由は仲の良い友達二人が、その学校を受験するからだ。
他の二人は頭も良く、合格には十分な成績だ。だが息子と言えば……。
本当なら、安全策を取って一つ下のレベルの公立高校を受けて貰いたい。滑り止めに受ける私学はお金の面を考えると避けたかった。でも、この学校を志望校に選んで以来、息子は本当に勉強を頑張っている。志望校を変えろとは言い出せなかった。
「毎日勉強頑張ってるな」
俺は部屋で勉強している息子にコーヒーを差し入れた。
「ありがとう。模試の結果を見ればまだまだ頑張らないと駄目だからね」
息子はコーヒーに礼を言いながらも、ノートから顔を上げずにそう言った。
「ちゃんと寝てるか? 無理はし過ぎるなよ」
「うん大丈夫。ちゃんと寝てるよ」
そうは言っているが、夜遅くまで部屋の灯りが点いている。
こういう時、親としてどう言えば良いんだろう。
もうこれだけ頑張っている息子に、ランクを落とせと言う気は無くなった。後は全力で頑張って欲しい。だが、体は壊して欲しくない。だが、それでも体を壊すかも知れないぐらい頑張らなきゃいけない時が、人生に有ることも知っている。
「何が有っても、どんな結果になってもお父さんはお前の味方だ。全力で応援しているから頑張れ」
俺は息子の肩に手を置いて、そう言った。
「うん、ありがとう」
今度はノートから顔を上げ、俺の目を見て、息子はそう言った。
神様、出来ることなら、息子を志望校に合格させてあげてください。これだけ頑張っている息子を、体を壊さず志望校に通わせてあげてください。
無信教な俺だが、この時ばかりはと心の中で神に祈った。
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