第194話 四月十二日はパンの記念日
パン食普及協議会が一九八三年三月に制定。
天保十三(一八四二)年旧暦四月十二日、伊豆韮山代官の江川太郎左衛門英龍が軍用携帯食糧として乾パンを作った。これが日本で初めて焼かれたパンと言われている。
また、毎月十二日を「パンの日」としている。
「一切れのパン」という話を読んだ。
第二次世界大戦中にドイツの捕虜となった主人公が、脱走して家に帰り着くまでのお話だ。その主人公の脱走劇の心情に深く考えさせられた。
主人公は途中で、ラビというユダヤ人から一切れのパンを渡される。
ラビは「このパンをすぐに食べずに、出来るだけ長く持っていなさい。苦しくてもパンを持っていることで我慢強くなれるから」と主人公にアドバイスする。主人公もラビの言葉を守り、地獄のような逃亡生活を、いつでも食べることの出来る一切れのパンを心の支えにして乗り切ったのだ。
いつでも食べることが出来る。いつでも今の飢餓状態を改善できるという救いが有ることで、主人公は強くなれた。心が折れなかった。俺もそんなパンのような物が欲しいと、嫁さんに話したんだ。もちろん物語のあらすじと一緒にな。すると次の日、会社から帰ったら、嫁さんが凄く嬉しそうに出迎えてくれたんだ。
「お帰り! あなたの凄く喜ぶ物買って来たよ!」
何を買ったんだと思って中に入ると、ダイニングテーブルの上に隙間が無いくらいパンが並んでいた。
「どう? これで心が強くなれるでしょ!」
嫁よ、違うんだ。そうじゃ無いんだよ……。
と思ったが、得意気な顔で胸を張る嫁さんを見ていると、可笑しくてどうでも良くなった。俺の為に、こんなにたくさんのパンを買って来てくれたんだ。そう思うと、頓珍漢な行動だと思いつつも、嫁さんが可愛くて仕方ない。
「ありがとう。凄くたくさん買って来たね。食べ切れるかな」
「そう、張り切って買い過ぎたから、今日の晩御飯はパンなの」
ゲッと思ったが、顔には出さなかった。
「よし、じゃあ一緒に食べようか」
「うん!」
俺達は笑顔でパンの晩御飯を食べた。たぶん、明日の朝も昼ごはんもパンになるだろうけど満足だった。
俺には一切れのパンは必要なさそうだ。だって、こんな可愛い嫁さんが俺を支えてくれているのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます