第174話 三月二十三日は世界気象デー(World Meteorological Day)
世界気象機関(WMO)が、発足十周年を記念して一九六〇(昭和三十五)年に制定。国際デーの一つ。
一九五〇(昭和二十五)年のこの日、世界気象機関条約が発効し、WMOが発足した。
WMOは、加盟諸国の気象観測通報の調整、気象観測や気象資料の交換を行っている世界組織である。日本は一九五三(昭和二十八)年に加盟した。
「今日は暑かったな」
ダイニングテーブルで向かい合って夕飯を食べている夫が、私に同意を求めるように呟いた。
「今日は夏日だったみたいよ」
「三月なのに夏日なのか! まだ春も来てないのにな」
夫は驚いたようにそう言った。
「桜も咲き始めているから、もうすっかり春だよ」
「確かにそうか。桜って入学式に咲いているイメージだったのに、その頃には全部散ってそうだな」
夫はそう言って、大好物の唐揚げを口に運ぶ。
「桜をバックに写真を撮れないのは可哀想ね」
「ホント、二週間ほど前までは寒かった気がするのにな」
「今年の冬は寒かったよね。何十年ぶりの寒波到来とか言ってたぐらい。ここ数年、何十年ぶりの異常気象が連発してて聞き飽きたぐらいね。地球はどうなっちゃったんだろ」
私も大皿から唐揚げを一つ取って、取り皿に移した。
「異常気象が通常気象かと思うぐらい、毎年毎シーズンくらい聞いてるよな」
「私何だか怖いのよ。もうこの異常気象は人間がどうにか出来る範囲を超えていて、手遅れになっているんじゃないかって」
気象の話題が出たので、私は常々感じている不安を夫に打ち明けた。
「うん、それは俺も考えたことはあるよ。でも、俺達が不安に感じることじゃ無いと思うんだ」
「どういうこと?」
「俺達のような一般人では不安に感じていたって、防ぎようが無いってことさ。もちろん、一般市民としてやるべきことはやるよ。例えばゴミの分別とか省エネに貢献するとか。あとは災害に備えて防災グッズを用意するとかもね」
確かに、夫はそう言う面は進んで行動している。個人でやれることはやっていると思う。
「もうすることをしてしまえば、後は異常気象のことは忘れて、不安を感じず日々を楽しむべきなんだよ」
「ええっ……忘れても現実的には危機が迫っているかも知れないでしょ」
「危機が迫っているとしても、俺達が心配したからって、止めることは出来無いんだよ」
「まあ、確かにそうかも知れないけど……それで良いのかな」
夫の言ってることは理解出来るけど、それで良いのかとモヤモヤした気持ちは残る。
「心配してても、地震や台風とかの自然災害は止められない。なら、ずっと心配するより、やるだけのことはやって、後は忘れて楽しく暮らす方が有意義に過ごせると思わないか?」
確かに、災害の備えをしていれば、それ以上心配してても意味は無い。
「明日死ぬかも知れないからこそ、無駄な心配で心を重くするより、毎日楽しく充実した日々を送りたい。俺はそう思うんだ」
「うん……分かった。確かにあなたの言う通りね。結果が同じになるなら、毎日が充実した方が良いよね」
「そう、俺はもう実践しているけどね」
「えっ? どんなこと?」
「毎日、大好きな人と一緒に生活して、美味しいご飯を食べて楽しく暮らしていることさ」
夫はそう言って、また唐揚げを口に運んだ。
「うん、私も余計な心配はやめることにするわ。せっかく大好きな人と一緒に生活して、美味しい物を食べているのに、台無しにしたくないからね」
笑顔でそう言った後、私も唐揚げを頬張った。
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