第68話 十二月七日はクリスマスツリーの日

 一八八六(明治十九)年のこの日、横浜・明治屋に日本初のクリスマスツリーが飾られた。



「ねえ、クリスマスも近いし、ツリー買わない?」

「ああ、良いね! 俺、家にツリーを飾ったこと無いんだよ」


 夫は私の提案に、一も二も無く賛成してくれた。


「私もそうなの。だから一度家に飾ってみたかったんだよね」

「じゃあ、ネットで探してみようか」


 私たちは結婚半年の新婚夫婦。2DKの賃貸マンションで、幸せに暮らしている。

 夫は物事にこだわりが少ない人で、いつも私の提案を受け入れてくれる。その受け入れ方も「どちらでも良いよ」とか「したいなら、すれば良いよ」的な感じじゃ無く、私の提案を肯定してくれて、更に実行に協力までしてくれるのだ。

 そんな感じなので、この2DKの中は私の好みで埋め尽くされている。こんなに居心地の良い空間はこれからも巡り合えないと思う。余りにも私好みで申し訳ないので、夫にも意見を聞いてみたりしたのだが、「君が喜んでくれる顔を見ているのが僕は一番好きなんだ。だから、自分のしたいようにして欲しい」って言われたのだ。凄く愛されてるって感じがして、それを聞いた時には、私は幸せで満たされてしまった。



 数日後、ネットで注文したクリスマスツリーが届いた。リビングに設置して、二人で飾りつけをしたら、部屋の中が一気にクリスマスモードに変わった。


「これ、買って来たんだ」


 夫が一枚のCDアルバムを取り出して、ミニコンポで再生する。するとスピーカから、オルゴールが奏でるクリスマスソングが流れて来た。


「凄くステキ。一気にクリスマスムードが高まったね」

「俺、凄くクリスマスが楽しみになってきた」

「私も」


 私はそう言って、夫の腕に自分の腕を絡めた。

 あと三週間ほどで、結婚して初めてのクリスマスだ。今年はイブとクリスマスが土日にになっているが、二人で家で過ごす予定だ。

 ケーキは予約してあるし、作る料理も決めている。夫はローストビーフに挑戦するらしい。

 イルミネーションを観に行ったり、どこかに出掛けたりする予定はない。ただ、家で一緒に映画を観たり、ゲームをしたりするだけ。友達とパーティーを開いて騒いだり、イベントに参加したりしたこともあるけれど、二人だけで過ごす今年のクリスマスを、私は一番楽しみにしている。

 早くクリスマスが来ないかな。

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