第164話 三月十三日はサンドイッチデー
一が三で挟まれている(サンド一=サンドイッチ)ことから。
この日とは別に、サンドウィッチの生みの親とされるイギリスのサンドウィッチ伯爵の誕生日十一月三日が「サンドウィッチの日」となっている。
俺には中学時代からの親友が二人いる。
俺達三人はサンドイッチトリオと呼ばれている。なぜなら、親友二人の名前は三上と三崎、俺が一ノ瀬で、三の二人に一の俺が挟まれているから、サンド一でサンドイッチトリオとなるのだ。
同じ高校に進学して、クラスまで同じになった。三人で喜んでいたら、俺達はそのクラスで衝撃的な出会いをする。クラスメイトの中に逆サンドイッチ娘と呼ばれる女子三人組が居たのだ。
彼女たちの名前は一村、三河、一岡で、一の二人に三の一人が挟まれる、逆サンドイッチだったのだ。
珍しさもあって、俺達サンドイッチトリオは逆サンドイッチ娘とすぐに仲良くなった。六人でカラオケに行ったり、遊園地に遊びに行ったり、夏休みには海にも行った。
そんな関係が続き、二学期に入ったある日のこと。俺達三人だけで話をしていて、サンドイッチ娘で誰が好みかって話になった。恐ろしいことに、三人とも三河さんを好きだと判明した。しかもガチで今すぐにでも付き合いたいレベルだ。幸いにもまだ誰も行動に移していなかったので、とにかく抜け駆けだけはやめようと話し合った。
その日以降も俺達は六人で遊んでいた。でも、自分の気持ちを二人に話したことで、俺は三河さんを余計に意識してしまう。しかも他の二人も同じみたいだった。
「こんな気持ちのままじゃいつまでも続かないよ。いっそのこと、三人同時に三河さんに告白しないか? 誰が付き合うことになっても、恨まない、祝福するってことで」
二人も俺と同じ気持ちだったのか、すぐに賛同してくれて、俺達は三河さんに告白することにした。
放課後に三河さんだけ人気のない校舎裏に誘った。
「俺達三人とも三河さんのことが好きなんだ。この中の誰かと付き合ってくれないか?」
俺が代表で告白すると、三河さんは驚いた表情を浮かべて、すぐに言葉が出て来なかった。
「あの……ごめんなさい。私は三人とも付き合うことが出来ないよ」
三河さんは泣きそうな顔で頭を下げた。
俺達は三人の誰かとなら付き合って貰えると思っていたが、それは勝手な思い込みだった。確かに誰とも嫌だって言うのはあり得ることだったのに。
「困らせてごめん。今の告白は忘れて、またみんなで遊んでくれないか?」
呆然とする三人の中で、一番冷静だったのか、三上が三河さんにそう言った。
「俺からも頼むよ。六人で遊ぶのが楽しいから、今までみたいにしてくれないか」
俺も三上と同じ気持ちだったので、後に続いた。
「うん、ありがとう。私も六人で遊ぶのが楽しいから今日の事は忘れるわ」
三河さんは少し無理して作ったような笑顔でそう言ってくれた。
その後も俺達は逆サンドイッチ娘たちと変わらず遊んでいたが、関係に変化が起こった。ほぼ同時期に、三上と一村さん、三崎と一岡さんが付き合いだしたのだ。しかもどちらとも女子からの告白だった。逆サンドイッチ娘内でどう言ったやりとりが有ったか分からないが、俺達三人が三河さんに告白したのが引き金になったみたいだ。
三上と三崎は、もう一度三河さんに告白してみろと勧めてくれたが、なんだかこの状況でまた振られると立ち直れなくなりそうで出来なかった。
そんな時、三河さんから校舎裏に呼び出された。
「実は私も一ノ瀬君のことが前から好きだったの。でも、告白してくれた時に、それを言う勇気が出なかった。今更だけど、付き合って貰えないかな」
三河さんは緊張の面持ちでそう告白してくれた。
俺はその言葉を聞いて、一瞬フリーズした。全然予期せぬ言葉だったので、思考が凍り付いてしまったのだ。
「……ホ、ホントに?」
「うん、冗談でこんなこと言えないよ」
「めっちゃ嬉しい。俺の方から頼みます。彼女になってください!」
「うん、ありがとう。私も嬉しい」
ホッとして笑顔になった三河さんは本当に可愛かった。
その後、俺達六人は、ずっと仲良く付き合っている。もし俺達がこのまま三組とも結婚したら、子供達も仲良しサンドイッチになるのだろうか? どんな組み合わせになったとしても、将来もずっとみんなで仲良く付き合って行きたいと願った。
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