第64話 十二月三日はカレンダーの日

 カレンダーに関する全国組織の全国団扇扇子カレンダー協議会と全国カレンダー出版協同組合連合会が、カレンダーのさらなる普及と発展を目指して制定。

 日付は太陰太陽暦が明治五年十二月二日で打ち切られ、翌、十二月三日が太陽暦の明治六年一月一日となった明治改暦の史実に基づく。この改暦により、日本は太陽暦を採用している諸外国と外交上の足並みを揃えられることになった。



 私は無地で日付のスペースに文字を書き込めるシンプルなカレンダーが好きだ。毎年百円均一で購入して使っている。


「シンプルなカレンダーだね」


 同棲を始めて三か月の彼氏、竜也りゅうやくんが、私が壁に張ったカレンダーを見てそう言った。


「あっ、私こんなシンプルなカレンダーが好きなんだけど、これで良かった?」


 事前に相談するのを忘れていた。同棲を始める前に、価値観や好みの違いがあるから、なんでも相談しようと言っていたのは私の方なのに。


「うん、俺はこだわりないから、これで良いよ。でも紗季さきって猫が好きだからそういうカレンダーを使うのかと思ってたよ」

「そういうのも良いんだけどね。これはこんな風に使えるのが良いのよ」


 私はそう言うと、赤と黒のマジックを持って来て、カレンダーに書き込みだした。


「ああ、記念日好きな紗季らしいね」


 竜也君はそう言って笑ってくれた。

 私が書き込んだのは、二人の記念日。付き合い始めた日や、初めてのデートの日。同棲を開始した日も書き込んだ。


「こうして書き込んでおけば、忘れずに済むでしょ」


 私がそう言うと、竜也君もマジックを持ってカレンダーをめくりだす。


「じゃあ、俺も協力するよ」


 竜也君が赤で丸を付けた日は、私の記憶には無い記念日だ。


「この日は何の日なの?」

「この日はね、二人が初めて会った日。俺が紗季に一目惚れした日だよ」

「ええっ、そうなんだ……」


 私達は仕事の関係で出会ったので、初めて会った日は忘れていた。そんな私が忘れていた日まで覚えてくれていたなんて、嬉しくて胸が一杯になる。


「次はプロポーズの日が記念日になるかな」


 竜也君は茶目っ気たっぷりの笑顔で私を見る。


「うん、結婚式の日とか、子供が産まれた日とか、記念日でカレンダーが一杯になるようにしようね」


 私は竜也君に抱き着いた。

 本当に彼と出会えて良かった。これからもずっと二人で幸せに暮らして行こうね。

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