第200話 四月十八日は発明の日

 発明協会が一九五四年に制定。

 一八八五(明治十八)年のこの日、現在の「特許法」の元となる「専売特許条例」が公布された。



 同棲している僕の彼女は発明家だ。まだ発明品は無いので発明家と呼んで良いのかは議論の余地があるだろうけど、彼女は日夜発明に勤しんでいるので、僕にとっては発明家だ。

 日々発明に勤しんでいる彼女だが、ちゃんと仕事はしている。帰宅後や土日に発明に取り組んでいるのだ。まあ、家事は全て僕が担当することになるのだが。

 発明と言うと難しいことをしているように思うかも知れないが、彼女はそうでもない。日々の生活の中で「こうすれば便利になるのに」とか「これがあればもっと早く出来るよね」って言うアイデア商品を発明するのだ。

 彼女の想定では、まず発明品の図面と試作品を企業に提案し、そのアイデアが採用されれば権利を売る。その売った資金で次の発明品は独自で制作、販売しようと考えているらしい。

 彼女にどうして発明がしたいの? と聞いたことがある。


「発明で特許とって、お金持ちになりたいの」


 なるほど、単純明快だ。お金の為なんて不純だと思う人もいるかも知れない。でも僕はそれでも良いと思っている。肝心なのは目標を決めてそれに向かって努力しているかどうかだ。そういう意味では、彼女は十分に努力していると思う。

 そんな彼女の話を会社の同僚にしたことがある。彼に同棲している彼女とはどんな人だとしつこく聞かれたからだ。


「そんな不良物件みたいな女は捨てちまえよ。お前だけが家事したり負担が多いだろ」


 僕はそれを聞いて、世間の人は僕達の関係を知ったらこんな反応するのかと思った。でも、ただそれだけだ。僕達の生活が何か変わることは無い。

 誰がどう思おうと、僕と彼女が今の生活に満足していればそれで良いのだ。

 例え、三十年後、五十年後になっても、彼女の発明品は製品化されていないかも知れない。でも彼女がその時も、まだ発明に対して情熱を失っていないのなら、きっと僕は傍で支えていると思う。それで良いと僕は思っているから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る