第72話 十二月十一日は胃腸の日
師走にこの一年間を振り返ったとき、大切な胃腸に負担をかけてきたことを思い、胃腸へのいたわりの気持ちを持ってもらいたいと、薬局、ドラッグストアなどで販売されているOTC医薬品(一般用医薬品)の団体である日本OTC医薬品協会が制定。
胃腸薬の正しい使い方や、胃腸の健康管理の大切さなどをアピールする日。日付は一二と一一で「胃にいい」と読む語呂合わせから。
またこの季節がやって来た。毎年毎年、憂鬱になるぜ。
やれ忘年会だ、やれクリスマスパーティーだ、それが終われば新年会だ。暴飲暴食が続くんだよな。
そう俺はある男のお腹の中にいる「胃」だ。
俺の宿主は馬鹿な男で、自分の限界ってものを分かっちゃいない。勢いだけで飲んだり食べたり。こっちが一生懸命消化しようと頑張っているのに、限界超えて吐き出したりしやがる。体のことも少しは考えろと言いたいよ。俺はまだ主張するから良いが、引っ込み思案の肝臓がやられた日には、取り返しがつかないからな。
十二月に入ったが、例年とは違い、宿主は無茶な暴飲暴食をしていない。考えた結果、俺はある結論に達した。
実は宿主、数か月前に結婚したのだ。相手は美人でも可愛いタイプでも無い。でも優しく包み込むような笑顔が素敵な女性だ。この女性が居るから、宿主は無茶なことをしなくなったのだと思う。
思えばこの数か月、ずいぶん俺の中に入って来る食べ物が変わった。前は肉や揚げ物などが大半だったが、今は野菜や肉がバランス良く入って来る。俺もかなり楽になっていたんだ。
馬鹿な宿主だと思っていたが、配偶者選びでは成功したようだな。
奥さんの機嫌を損ねるなよ。この奥さんと仲良くやってる限りは、この先何十年も安泰だからな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます