王宮にて その3
無邪気な少女のような、でも何十年も生きてる婦人のような雰囲気を持つ話し方をする少女に驚く。
しかも普通ありえない事を簡単に言ってくる。
まさか王位継承順第3位の自身が?と思ったがエステルは先を見ているかの様な目でそのまま語る。
「この先陛下にとって悲しい出来事が起こるけど、それは陛下の手で止める事になる...それを乗り越えて陛下は国王となるわ、そして陛下は同国の公爵家の令嬢と婚姻を結んで子を成すわね、あと隣国から招いた側室が2人...王女が1人で王子が2人見えるわね...」
少女は目を伏せてそう語る。
「エステル嬢は私と婚姻を結びたくはない故にそんな事を言うのか?」
そう言ってこのお見合いを辞めようと思っているのかと聞く。
「私自身相手を探すのは本気なのよ?ハイラントに繋がる為にも...でもいろいろなお相手に出会っても別のお相手と共になる未来しか見えないの、だから出会った人々全員にそのお相手の事を伝えるのよ、困った事にね」
仕方ないのよ、と寂しそうな笑顔でそう言う姿が魅力的だ。
「私としてはエステル嬢、其方がとても魅力的だ...全てを捨てても其方の横に立ちたい」
「ありがとう、お世辞でも嬉しいわ...私も陛下が魅力的に見えるけど将来見えるお相手が私じゃないの...特に私は必ず『子を成さねばならない身』だから...だから陛下では無理ね」
なんともつれない言葉を言うエステルに何とも言えない焦りのような気持ちを抱くサヴェリオ。
たったこの短い時間だが、サヴェリオはこの少女を手に入れたいと強く思うまでに魅了されていたのだ。
お見合いの席ではその様な形で終わるが、どうしてもこのままではとサヴェリオは思い、数日エアヴァルドで過ごし、毎日の様にエステルの元へと足繁く通ったのだ。
しかしエステルは同じ事を言ってはサヴェリオに対してつれない態度を取り続けた。
そして止まれる最後の日の事...二人にある出来事が起こる。
今日は最後と二人だけで寺院付近を散策しながら話す時間を設けた時の事だった。
「陛下は何故私にこんなにも会おうとするのかしら?今までの相手はそんな事なかったのに」
エステルは呆れ顔である、正直今までここまでしつこい人物に出会った事はなかった。
「陛下は辞めて頂きたい...私は貴女と離れたくはないのだ」
「まるで愛の告白ね...私と結婚するって事は所詮種馬になれって事なのよ?最悪じゃない?」
ふとエステルはしゃがみ道端で咲いている薄紫色の矢車草を摘む。
「愛の告白ですよ...」
サヴェリオもその近くにある薄桃色の矢車草を摘むと微笑みながらエステルに差し出す。
「まさか?陛下みたいな方にはそんなセリフ似合わないわよ?」
「はは、酷いな...それに何度も言ってるが陛下は辞めて欲しい、エマヌエーレと...」
「それは将来の王妃様に言わせなさいよ...」
エステルは呆れながら矢車草を受け取る。
「私のような軍人には王には相応しくない...それに上の王子二人以外にも弟が二人、特に王太子には子供がもう居るのだ...そんな私が何故王になると言うのだ?」
サヴェリオはその当時...正直な所エステルが預言者だと信じてはいない...前もって得た情報や感の良さでそんな事を言ってるとばかり思ってたのだ。
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