悪魔サロス その4
ディビッドの銃が元の姿へ戻るとそれを懐へ戻し、王座に今も座っているサヴェリオの方を向き、跪く。
他の上級異端審問官も武器を仕舞い、ディビッドと同じ様に玉座の方を向き跪く。
エステルは結界を解除させると、近衛兵が倒れている老人...罪人ベネディッドを確保を始める。
「ははは、なんて素晴らしい余興か!」
サヴェリオは高笑いをする姿に臣民である貴族が驚きを隠せない。
そう、まるで氷の様に冷酷でもあるとの国王陛下がその様に笑うのだ。
「南の預言者エステル、其方の信ずる神こそが真の神なのだな」
「そうでございます」
エステルはサヴェリオに顔を向け、深々と頭を下げる。
「第三王子であった余がこの王座に着いた原因!『神』と敬われるも実際は邪悪なる『悪魔』であり、ウルム前国王や兄である王太子他数多の王族を殺し、多くの血を流して来た邪悪なる存在!それは王家を...いや国家を転覆させようとした事!それを其方の信ずる神は滅びに至らす事はこれで明白!」
サヴェリオは玉座から立ち上がり、エステルの側に向かう。
残っている貴族はザワザワとし始めるが、サヴェリオがその冷たい瞳で周囲を見回すと一瞬でそれが消える。
「長きに渡り其方等の活躍を余は聞き及び、そして今この目でしっかりと見届けた」
サヴェリオはエステルの目の前に立ち、エステルのヴェールを上げてその瞳を覗き込み様に見つめる。
「今日、この時をもってこのウルム国の国教を其方の信ずる神、
その言葉に響めきが起こる、今までウルムでは国教は存在せず、各地で信奉されている神などもいるがそう指定された事がなかったためだ。
「そしてこの国に信仰の根を下ろす為に...余は神の代理者であるこの南の偉大なる預言者エステルを妻として迎え入れる」
そう言ってエステルの唇にサヴェリオは口付けをする。
エステルは微動だにせず、サヴェリオの行為を受け入れる。
サヴェリオのその行動にただただ周囲は驚きを隠せない。
「...謹んでお受け致します」
エステルはサヴェリオにそう言うも、どうも表情は固い。
「さぁ...余の花嫁よ」
エステルは差し出されたサヴェリオの手を取り、そのまま二人で玉座の方へと歩いていく。
サヴェリオがまるで愛する者を得て笑っているのに対してエステルの表情はどこか憂いに満ちている。
その姿を周囲の貴族達全員もだが、何よりもその事を知らされていなかった四人の上級異端審問官達は驚き、ただ目を見開いて二人の姿を見つめるのだった。
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