これだから無自覚モテ男は!

「おかしい...アスタルトは倒した筈なんですが...」


新聞を取るため朝外に設置しているポストを開けるとバサバサとラブレターの山...心なしか以前より増えている。


仕方ないと思いながら全部拾い集めて店に入ろうとすれば店の裏口付近には女の子達がディビッドに告白しようと何人かがいる様だ...


それに気づいて見えない位置から2階に飛びうつり窓から部屋に入った後に腕組みしてううむと首を傾げる。


「よぉ!ディビッド」


しれっとマキシムが部屋に入ってくる、きっと普通に裏口から入ったのだろう。


「何故堂々と入ってくるんですかマキシム」


こっちはいろいろ気を回して窓から入って来たのに、とディビッドは思う。


「うーん、俺の姿見ると女の子達避けるからなぁ」


まぁマキシムは顔はともかく体格が大きいからか威圧感を感じるのだろう。


「おかしいんですよ...ほらアスタルト倒したのにまだラブレターが...」


新聞と一緒にテーブルに置いたラブレターの山を見せるとマキシムはため息をつく。


「はぁ...この無自覚モテ男め...それはなぁ、あんな人通りのある場所でクレープ作って目立ったからだ!」


「?」


「それこそ噂の大人気のイケメンパティシエをあの公園で初めて見た女の子達がお前に惚れてしまっての結果だ!この天然イケメンが!」


「ええ...」


マキシムに指差しされて指摘されディビッドは困惑した顔をするが、マキシムは呆れた顔で続ける。


「昔っからそうだったが自覚しろ!このモテ男め!」


「自覚も何も私はティナ一筋ですしねぇ...」


ディビッドは異性として好きなのはバレンティナのみである、預言で間違いなく結婚する相手と決まっていたが実際に最初に出会った時点から一目惚れだったし、彼女をディビッドだけのものにする為に婚姻の契り印を刻む、既成事実を作るなどの斜め上なやり方で囲うくらいの事をする程である。


「あ!だったらティナと結婚するってみんなに言えば諦めてくれるかもですね!ティナとおそろいな結婚指輪つけて見せびらかせば...」


とても良い事を思いついたかの様に良い笑顔をするが、マキシムは顔を真っ青にし口を開く。


「それはバレンティナ嬢が可哀想だ!エアヴァルドへ連れ帰るまでは辞めてやれ!」


マキシムはそんな事したら女の子達の標的がバレンティナに向けられるとすぐに理解し止める。


「ふむ...だったらどうしたものですかねぇ...」


「自分で考えろ!あとバレンティナ嬢を困らせるような事はするなよ!」


マキシムは腕を組んでディビッドを嗜める。


「ところでこんな早い時間からマキシムどうしたんですか?」


「あ!そうだそうだ、例のアスタルトの件だが『明けの明星』が関わっているらしい...その件で調べる事があるから近いうちにジョナサンを派遣するそうだ、かなり心配だが...」


マキシムはここに来た理由を思い出して話す。


「ええ?あの引き篭もりが???」


「あいつ頭が良いくせにウルム語ちゃんと話せないしなぁ...で、困らないようにここに暫く居候させろとエステル様から命令だ」


「はぁ???」


「一応部屋はあるだろう?」


フィオーレ・ビアンコの2階の部屋はディビッドが生活しているスペース以外使ってない部屋も確かにある。


「ここはティナとの愛の巣なんですよ!あの引き篭もりが来たら連れ込めないじゃないですか!最近やっとお風呂一緒に入れるようになったのに」


必死になってディビッドは抗議する。


「お前...まさか...」


マキシムが更に顔を真っ青にさせる...ええ...風呂とか連れ込んでんのかコイツ...とドン引きである。


「別に夫婦なんだから良いでしょ?」


ふん!と腕を組んで椅子に座る。


「確かに婚約の契り印はそう言う物だがなぁ...現状はそうじゃないんだぞ?それにそんなんばっかだとその内エステル様にガチで制裁食らわされるぞ...大丈夫か...」


「ここにいる内は姉上はピッピちゃんを通して突くくらいしか出来ませんしねぇ...ふふふ」


何処となくニヤニヤしている...まぁあの人類最強のエステル様が近くに居ないだけでもディビッドはかなり自由を謳歌しているのだろう...自由すぎて碌でもない事をしでかしているが...


「まぁそう言う事だから、で俺は部屋の準備に手伝いに来たんだ」


「王弟なのにこき使われてますねぇ、マキシム」


「俺はエステル様の僕で神殿騎士以外の何者でもないよ...ほらお前も動け」


「私はこれから店の準備がありますしー」


「バレンティナ嬢が来ない日は仕事して無いって言うのは聞いてるぞ」


マキシムは睨みつける様な目でディビッドを見る。


「バレてましたか...」


「ほれ!これから頑張って部屋の掃除するぞ!」


「えええ...使用人にやらせますよ、そんなの」


困惑気味な顔をするディビッド。


「これもエステル様からの命令だ!」


「チッ...姉上め...」


マキシムはしかめっ面のディビッドの首根っこを掴んで引きずる様に部屋を出る。


バタン、とマキシムがドアを閉める衝撃でなのかテーブルにあるラブレターの山が崩れてパサパサと床に落ちたのだった...


ー終ー

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