フルーツタルト

アスタルトに受肉された女性は高揚して同僚を殺した記憶が残っており、ただただ苦悩していた。


もういっそ死んでしまいたかった...全員自分の手で殺した事を覚えている...なんて恐ろしい事をしてしまったのか...


ただ悪魔によって受肉された影響故に今回は情状酌量を受ける事になる...王都から離れて軍の監視下の元で生活することになるのだ。


「...死にたい...」


簡素な保護観察部屋の中、弱ってしまっておりずっと食欲も無く、ベットの上でただ生きている状態。


罪の重さに対しての罰は軽いとすら思う...だってムカつく同僚もいたが殆どは善良で良くして貰った人々も多かったからだ...彼らや彼女らには家族もいた...


生きていたってその人達に償う事が出来ない...


そんな中だった。


「とある方からの差し入れですよ...」


看護師の女性がにこやかに部屋に入ってくる、トレイに何かを載せて。


女性のテーブルにそれを置いていく...ふとそれを見て目が大きく開かれる!


そこには大好きなフルーツタルト!あのフィオーレ・ビアンコのフルーツタルト!


そこにはちょっとしたメモが一つ...そっと手に取って目を通す。


"いつもフルーツタルト買いに来てくれたお嬢さんへ。

記憶がある貴女にとってきっとこれから先の人生は茨の道と思えるかも知れません。

しかし生きて下さい、貴女が生きる事は神が望まれた事なのです。

貴女が平穏な日々を取り戻せる事を祈って。

フィオーレ・ビアンコオーナー ディビッドより"


「ああっ!」


涙が頬を伝う...私を知っていてくれたんだ!


せめて...この思い出だけを糧に生きていこう...その女性はメモをぎゅっと抱きしめて泣き続けた。

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