ただの偽善よ

悪魔アスタルトを倒して数日後...


「お店の修繕が終わりましたので明日からは開店準備に取り掛かりますので今日でクレープ屋さんは終わりですよ!はい!」


そう言ってチョコバナナ&イチゴのクレープを渡されたわ。


「でも思ったより早く修繕が終わって良かったわね...もぐもぐ」


チョコバナナの甘さとイチゴの甘酸っぱさが良いハーモニーを出してるわ...もぐもぐ...


「ティナのお陰でラゴーナ伯爵からそれなりな慰謝料と修繕費を頂きましたので、大工さん達にお金を弾ませたらあっと言う間に直してくれたんですよ」


ディビッドは手を洗った後に椅子を私の横へ移動させて座る。


「...慰謝料や修繕費は当たり前でしょ?」


「まぁ払って貰わなくてもウルムから資金を出して貰う事も出来たんですがね」


「やっぱり?」


「まぁ私達はウルムからの依頼でここにいるんで、更に言えばラゴーナ伯爵の家の取り潰しも圧をかければ可能だったんですけどね、ティナをあんな目にあわせたんですし」


「そこまではいいわよ...それにフランチェスカだって貴方の事が好きだったからあんな事しでかしたんだし、それに悪魔のせいでもあった訳だもの」


「ティナは優しいですね」


「...優しい訳じゃないわ...利害関係で恩を売った方が良いって判断しただけだものっ...それに」


「?」


「貴方に片想いしてる子達の気持ち分からなくもないから...」


そうよ...ただ預言によって一緒になるのが確定してるからこんな関係でいられるけど、そうじゃなかったらきっと片想いしている女の子達と変わらないもの...最初に助けて貰った時からそうだったんだもの...


「ティナ...」


「ふふ、可笑しいわね、ちょっと前までお金持ちなお爺ちゃんの貴族の後妻に入るって本気で思ってたのに今じゃ貴方じゃなきゃ嫌だもの...私貴方の事が好きよ」


そう言った瞬間ディビッドの顔が真っ赤になる。


ディビッドはどうも私から『好き』や『愛してる』と言った言葉に弱いみたい...いつも自分からぐいぐいくる癖にね...


「ティナっ!」


ぎゅっと抱きしめられたわ!


ちなみに今は2人だけ、認識阻害術の札のおかげで周囲には見えない状態...最後だからって私だけの為にこの場所でクレープを作ってくれたのよね...


キスしようとしてくるけど必死に止めさせる!いくら見えないからって外ではダメよ!


「あークレープ...」


驚いてクレープを地面に落としちゃったわ!


「後で新しいの焼きますから...だから良いでしょ?」


「もう!」


そうやってキスしようとした瞬間ガサガサ!と音がするのでびっくりしてその音の方を見る


「あ!」


ちょっとボロボロな服を着た小さいオレンジ色の瞳の男の子がそこに立っていた。きっと何も気にせずそのままこの場所に入ってしまったのね?


ディビッドから離れてその子に近寄る...きっと低所得層の子なのね...


「どうしたの?」


「なんか美味しそうな匂いがしたから近くに来たら急にお姉ちゃん達がいてびっくりしちゃった」


ぎゅるるる...と男の子のお腹の鳴る音が響く。


「お腹空いてるの?」


「うん...でもうちは朝と夜しかご飯食べないから...」


「そう...」


きっと今私がやろうとしている事は偽善なのかもしれない...でも...


「あのお兄ちゃんね、クレープ屋さんなの!お姉ちゃんが奢ってあげるから食べる?」


そう言うと男の子の目がキラキラ光る!


「ディビッド...お願いしていい?ちゃんとお金は払うわ!」


「...良いですよ、ティナの言う事なら」


やや怪訝そうな顔をするもそう言ってさっとクレープを焼く。


「シュガーバタークレープですよ、どうぞ」


そう言ってディビッドは作ったクレープを男の子に渡す、男の子は嬉しそうにクレープを頬張ったわ!


「美味しい!こんな美味しいのはじめて食べた!」


とても良い笑顔であっという間に食べてしまう。


つい昔の事を思い出してポツリと呟いてしまう。


「...貧しい子を見ると昔を思い出すの...貴族なのにパパのせいでお腹が空いても我慢しなきゃいけなかったり、ママが居なくなったり、ちゃんとしたドレスも買えないけど絶対参加しなきゃならないパーティに見窄らしい姿で参加させられたり、お兄様と金策の為に奔走したり、あの阿保と婚約する事になったりしたもの...」


しゃがんで男の子の頭を撫でる。


「いい、またこう言う美味しい物を食べる為に一生懸命勉強して勤勉に働いてお金を稼ぐのよ、諦めちゃだめよ、そう言う努力は報われるからね」


男の子はキョトンとした顔をするわ...でも良い笑顔でうん!と頷いてくれたわ!


男の子がありがとう!と言って去って行く。


「貧しいって嫌ね...みんなが豊かになれば良いのに...でもそんな貧しい人々を生み出している私達にも問題があるのよね...」


みんなが食べたい物を食べて困らない生活を送れるようになれるといいわよね...


後ろからぎゅっと抱きしめられる。


「やっぱり優しいですよ...優しすぎです...ティナは...」


「やぁね...ただの偽善よ...ひゃっ!」


...んん???首筋舐められてるぅぅ!!


「今から私の部屋に行きましょう?ティナを慰めたい...」


「ってもう!慰めるって言って日中からエッチな事したいだけでしょっ!ひゃん!」


いつの間にかお姫様抱っこされちゃったわ!


「さぁ戻りましょう!」


「だからダメって!使用人に報告されてまたエステルお姉様に怒られるわよ!」


そのまま攫われるかの様にフィオーレ・ビアンコのディビッドの部屋に連れて行かれ...日中からずーっと夕方までエッチな目に遭わされたわ...ううう...なんであんなに元気なのよぉ...ぐすん。

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