憂鬱な夜、そして脅威 その2
後ろからエステルお姉様がやって来た事に気づいたからだわ!
『次期アルカンタル侯シルヴィオ様...お久しぶりですね』
「エステル...様」
お兄様が顔を赤くしてエステルお姉様の顔を見つめるわ。
『どうか...このベルガモを守る貴方に...悪魔アンドラスをこのベルガモへ侵入しない様に...あの因果によって私たち姉弟が縛られている憎き悪魔アンドラスから人々を守る為にどうか力をお貸し下さい...』
エステルお姉様はお兄様に深々と頭を下げて懇願する...
「どうか頭を上げて下さい!」
お兄様がエステルお姉様にそう言うとお姉様は頭を上げて微笑んでるわ...
『今から私はこの街全体に結界を張り巡らせます...しかし現在実体ではないのでそこまで長くは持ちません...どうか結界が弱まる前に新しく結界を張り悪魔アンドラスの侵入を防いで下さい』
「わかりました...あの奇跡を行った貴女の言う事ならば真実でしょう...おい!警備兵全員に通達!街を守れ!そして術士全員は街に結界を張る準備を!」
お兄様は家の者を呼んで街を守る様に指示を出すわ。
『あとティナちゃん...ティナちゃん1番狙われる筈だから...安全な場所に隠れてね』
「え?」
『悪魔の本来の力を引き出す為の生贄...悪魔が求める生贄の中で最も最上の物は『生贄の娘』と呼ばれる呪いを引き継いだ女の子なのよ...あの邪悪なアンドラスがエルコラーロにいる術士達に目もくれずにベルガモへやって来る理由はティナちゃんがここにいるから』
そう言われて背筋がぞわりとする。
そう...確かにエスタバンの生贄にさせられそうになった時もそうだったわ...
「姫様、お屋敷の1番安全な場所に行きましょう」
アンナはそう言って私の手を引く。
『じゃあ私は直ぐに結界を張るわね』
そう言ってエステルお姉様はピッピちゃんの姿に戻って飛んでいってしまう。
そんな中、騒ぎを聞いてかパパがやって来るわ。
「おや?どうしたんだい?」
「パパ!」
「親父、非常事態だ!ティナと一緒に1番奥の部屋で隠れててくれ」
「ええ???」
パパが戸惑うけど仕方ないわよね...
─
ピッピちゃんは屋敷の外へ、屋根まで飛ぶとそこで姿をエステルへと変化する。
『結界構築!』
アルカンタル邸の屋根の上でエステルは大規模な結界を張り始める。
うっすらと上空から街全体にかけて、透明な膜の様な物が張り巡ると、 どことなく空が歪んで見える。
『アンドラスを倒しに早く戻って来なさいよ!ディブ!』
エステルはそうつぶやき、結界を維持する為に集中し始めた。
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