故郷へ その3

「まぁ一度は更なる封印を構築はする予定だったんですけどね、あの場所は」


ディビッドはそう言ってポケットから一枚の紙を取り出して開く。


そこには円陣が書かれていて、構造から封印式の構図が書かれているわね...しかも見たことも無い部分も多いし結構複雑なものだわ。


「ジョナサンの意見も聞きつつ強力な封印式を組む構図を3日で編み出したんです、これを行えば更に100年は大丈夫だと思いますのでね」


「これを編み出したの!」


ディビッドは術士じゃないのにこんな複雑な物編み出すとか!


「ええ、まぁ術式自体は使えませんが勉強自体はさせられましたし封印式はどちらかというと司祭の方が得意分野なんですよ」


「なかなか無茶な構図ですけどね、高位術士5人で組むレベルのをディビッドが主軸で僕が補助して組みます」


ジョナサンがクッキーをリスみたいに頬張りながら説明するわ。


確かに封印式は悪魔や強い魔獣などを封じ込むための術式だけど、通常の術とはちょっと系統が違うのよね。


「アンドラスは悪魔の中でも危険な部類になるからな...しかもここ最近リュシフェルが頻繁に出没している点も気になる」


マキシムさんは眉を顰めながらそう言う。


「それに流石に復活していない封印されている悪魔を滅ぼす事は出来ませんから、わかるものはこうやって封印をしたり強めたりするのも仕事の内なんです、リュシフェルは基本人を唆して封印式を解かせるのでそもそも人が解けなきゃ、やっても来ませんからねぇ」


ちょっと得意げに話すディビッド...紫色の瞳で賢者の血が入っているのは伊達じゃないのね...まぁとんでもないハイスペックなのは薄々分かってたけど...


「禁呪の書き板そのものを砕く事ができれば楽なんだけどな...正直な所封印じゃあ次世代に任せるような物だから」


マキシムさんがそう言う。


「悪魔が受肉しない限りは滅ぼせないって事?」


「そう言う事です、まぁ元々人の力では滅ぼすどころか何とか悪魔の力を削って、悪魔自身が自ら封印させる所まで持っていく位しかできませんからね」


「自ら封印って?」


「ああ、封印式自体って元々堕天である悪魔が編み出したものなんです...肉体を失って心臓である禁呪の書き板の姿になった悪魔が長い時眠りについて力を蓄えるためにね」


封印式の構図の紙を指差しながらディビッドは話す。


「封印式に生贄がどう必要で自身がどんな存在かを明記させ、欲深い人間に解放させ復活を試みるんですよ...だから簡単に解放出来なくさせるために更に人の手により封印式を組んで二重三重にしてしまうんです、人の組んだ封印式は基本時間しか解く方法無いですし、解放に生贄を要しませんしね」


「ああ、なるほどね」


ちなみに消失都市跡はベルガモ領の中心都市から南に馬車で片道1日半かかる場所にあるの。


そういえばちょっと気になった事が…


「そう言えば貴方達どこで寝泊まりするの?」


「ああ、サヴェリオ陛下から此処にって...あ!」


マキシムさんが言いかけて気がつく!


「アルカンタル邸って...バレンティナ嬢の実家の屋敷じゃないか...」


ディビッドはニコニコしてるしジョナサンはただただ申し訳ない顔をしてる...


ええ...どうなるのよこれ...


────

※結界は外敵から守ったり内部から外に出さない為の檻みたいなもので常に人の力で維持させる必要があり、封印式は長期間封じ込める為のもので一度封じると解除の為の方法を試みないと解除出来ない違いがあります。


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