夜会 その3

ディビッドなかなかダンスが上手くてびっくりしたけど、どうやらエステルお姉様を相手に嗜んでいたらしいわね。


何だか踊り疲れたから二人で備え付けのソファーに座って飲み物を頂きながらそんな話をしているわ。


「まぁ嗜むくらいはしないといけないと言われましてね」


「でも卒業パーティーでダンス踊ったりしなかったの、何だか大人気な気もするし?」


周囲の目を感じる限りは、すごい人気者だったはず。


「うーん...そもそも卒業の時期には悪魔退治に遠出してましたからねぇ...」


「ええ...」


「そもそも12の時に実戦で出て、13の時に国内でオロバス戦で半殺しにあって...18くらいには度々ウルムに入って悪魔を倒してましたんで、学業よりもそっちが優先でしたからねぇ」


何だか想定してたよりも早い段階で今の仕事に就いてるって事なの???


「ああ、でも学業をお粗末にはしてないですよ」


まぁ封印式の複雑な構築図なんか見ると頭は間違いなく良いとは思うけど...たまに常識外れな事を言い出すけども。


「あれ?でも18からウルムに居たの?」


でも確かお店は半年前くらいのオープンだった筈だし...


「いえ、活動拠点をこっちに移したのはこの1年でですよ?流石に月に1回は出現するのを毎回本国から移動して対応するには被害が甚大になるからと、ウルム側からの提案でですね、それにエアヴァルドには現在悪魔は大淫婦カ・ディミラの封印しかありませんし」


「大淫婦カ・ディミラ?」


初めて聞く名前ね。


「大悪魔...『数多なる悪霊 レギオン』『海蛇 レヴィアタン』『蠅の王 ベルゼビュート』などど並ぶ封印されてても影響を及ぼす厄介な存在なんですが、私達の世代では封印が解けない筈...何せ全員ハイラント子孫の誰かが滅ぼす事が決められているので」


「聖典に書いてるの?」


「そうですねぇ...正式名称は書いてませんが『大娼婦』『殉教者の血に酔う女』『嫌悪すべき忌むべきものの母』と表記されてる存在...それがカ・ディミラです、その辺はその内詳しくお教えしますよ、まぁ今日はそんな話よりも...」


とディビッドは立ち上がり、手を差し伸べる。


「音楽が始まりましたね、また踊りましょう」


そう言って微笑む顔が甘く蕩けそう...そして周囲の目が痛い...


そりゃあ元々婚約破棄騒動で傷モノな私が他国とはいえ見目麗しい貴公子を独り占めしている状態もだろうからねぇ。


婚約したって事を公に言ってる訳じゃないから、絶対ディビッド狙いな御令嬢は多い気もするし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る