夜会 その2

「南の偉大なる預言者にしてラインヴァイス公女のエステルの弟であるディビッド ラインヴァイス ザイオン卿よ、其方も楽しむが良い」


ラインヴァイス...エアヴァルドで有名な『英雄王』が王位を弟へ渡した時に何も持たないのはいけないと与えられた土地の名前...前に言っていた件ね。


確か実際に統治してるのは歴代のバーレ枢機卿だって事だからそこの統治者に置いたって事なのよ...名ばかりらしいけど。


しかもディビッドとエステルお姉様は英雄王マクシミリアン・ラインヴァイス=エアヴァルドと深い関係があるって話だけどもね。


つまり、名ばかりだけどエアヴァルドでの貴族籍を持っている事になった訳なのよねぇ。


これはディビッドと私の婚姻の為と言うよりも、サヴェリオ陛下とエステルお姉様の為なのかもしれないわ。


でも...エステルお姉様笑顔で対応してるけど、いつもの様な強くて誰よりも自信があるお姉様とは違う感じがする。


そんな二人の姿を見ていると、ディビッドがエステルお姉様から離れて周囲を見回すわね...って、私を見つけてとてもいい笑顔でこっちに向かって歩いて来たんだけど!


夜会服姿が何だか本物の王子様みたいだし、御令嬢達がほぼ全員注目してるのに...まぁフィオーレ・ビアンコでの人気っぷりを考えれば当然よね...


「ティナ!」


わぁ!何だかこっちまで注目されちゃうわ、確かにディビッドはエステルお姉様の次に注目されるもの...見た目とか地位とか...周囲の目が痛いわ...


「ディビッド、良いの???お姉様の元を離れても」


「まぁサヴェリオ陛下の元に連れて行くだけですし、あの3人が居れば全く問題ないですからね」


エステルお姉様はサヴェリオ陛下と一緒にいるけど、視界から離れない位置に3人が付いているものね。


まぁ本当は護衛なんて必要ないみたいだけど...


「じゃあ行きましょうか?スザンナ嬢、ティナを借りて行きますね」


「ええ!」


「ふふ、二人で楽しんで下さいね」


ってスザンナが行っちゃったわ!


「まぁ今日はあの二人の件だけでなくて、 ティナにもちゃんとした婚約者が居るアピールをするのに丁度いいですからねぇ、その為にそのドレスも用意しましたし!」


と腰に腕を回してきたわ!


「ええ~これからお兄様のお見合い相手を探す為に動こうと思ってたのに」


まぁディビッドに御令嬢のほぼ全員が注目してる時点でお兄様の結婚相手を探すだなんて絶望的な気がするけど...それにしても周囲の目が痛い...


「義兄様の件?」


「実は爵位が上がる事になったのよ...異例な事に...でもお兄様エステルお姉様の件で気落ちしてるから」


「ああ~なら無理に結婚なんてしないで私達の子供の一人でも養子に出せばいいでしょ?なにせ5人生まれることが確実ですから」


「もう!お兄様とおんなじ事言わないで!」


「痛っ!」


腰に回す手を抓るわ!もう!


いつもみたいにニコニコ顔だけど、どこか表情が浮かないみたい...やっぱりお姉様の件で思う所があるのかしらね。


そんな風に思っていると音楽が始まるわ。


「ああ、始まりましたね、じゃあ踊りますか」

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