chapter3:Travel Emotions Bergamo

しばらく会えないからってもう!

ジョナサンの発音練習を終わらせて、3人でお茶をしてた時に話さなきゃと思って口を開く。


「暫くの間ベルガモに戻る事になったの」


その一言でディビッドは固まる。


「え?暫くって???」


「お兄様は1か月くらいは、って言うけどタウンハウスを長く留守にする訳には行かないから2週間くらいかしら」


私が1人王都で生活しているのには訳があるの...


領地を持つ貴族に関しては、最低1人は家族や親族を王都で生活させる義務があるの...きっと反乱防止の人質みたいなものかしらね...


きっとお兄様が結婚して、子供が出来ればその子だって学校へ通える年齢になれば私みたいに親元を離れて王都で生活しなければならないでしょうね...


大概の領地持ち貴族はそうしてその義務を果たしているの。


ただ常にという訳では無くて、ちゃんと許可が降りれば里帰りくらいは許しては貰えるの。


お兄様が同窓会で戻って来ていた時にサヴェリオ陛下から許可を取り付けたそうだから、夏の丁度暑い時期にと思ったのよね。


ベルガモは海に面した場所だし、ちょっとしたバカンスと思って...とは目の前のディビッドには言わないでおきましょ...


「ベルガモでしたっけ?確か王都へ向かう時に経由したけど列車で二日かかる場所ですよね」


「そうよ、だから2週間はお休みね...ちゃんと練習欠かさないのよ」


「もちろん」


ジョナサンがチーズケーキを頬張りながら返事するわ。


ジョナサン綺麗な発音にはなってきたけど動作がガサツよねぇ...まぁ元があんな筋骨隆々じゃあ仕方ないかもだけど...


ちなみに私とディビッドはアイスレモンティーだけどジョナサンだけ冷たい牛乳出されてるわ...やっぱり身体作り気をつけてるのかしらね。


「2週間も...」


ディビッドは目を大きく見開いて、青ざめた顔してるわ...


「まるで世界が終わるかの様な表情ね...ちゃんと戻ってくるわよ」


「今にも死にそうですね、ディビッド...」


ジョナサンなんて呆れた顔してるし。


「だって1日2日会えないだけでも辛いのに...2週間も...」


「たまには真面目に仕事したら良いのよ...話だとお店私が来る時以外なんか休んでるとかスタッフさんぼやいてたわよ!」


「仕方ないじゃないですかぁ...この店はティナの為にある様なものですしー」


そんな事言って抱きついてくるけどもサボりはダメよ!


「ちゃんとジョナサンだって頑張ってウェイター頑張ってるし、お兄さんなんだからちゃんとしなさい!」


キスして来ようとするのを必死に止めてる姿をジョナサンはやれやれ...といった表情で見てるわ。


『ベルガモってあれだよな...エアヴァルド側の場所に消失都市跡があるんだろ?』


とジョナサンはエアヴァルド語でマテウスの伝記を持ってそう言う。


『そう、悪魔アンドラスが封印されてる場所で今も軍の監視の元で誰も入る事が出来ない場所よ』


そこは国の管轄下にある場所だから領主だとしても入る事は叶わない。


『何も無ければ良いけどな...』


ジョナサンはぼそりと呟く。


『流石に大丈夫よ、かなり大掛かりな結界だって張ってるし軍人が常駐してるもの』


英雄マテウスの伝記に書いてある悪魔アンドラスはとても恐ろしい悪魔で人々に影響を及ぼして殺し合いをさせる不破の力を持つ悪魔...


そのせいで1つの大きな都市が壊滅し、それを当時最強と呼ばれた英雄である賢者マテウスが封じた事で有名で、その被害は計り知れなく、その事件が無ければ今の術式学はもう100年は先に進んでいたのではと言われる程らしいのよね。


だから国は絶対にアンドラスを解放させない為に大規模に結界を施しているの。


「もういっそ付いていきたい...」


縋るディビッドがそんな事を言い出したわ!


「ダメよ!勝手な事してもし悪魔が現れたら困るでしょ!暫く我慢なさい!」


何だか大きな子供をあやしている気分になったわ...うーん...

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