ピッピちゃんのカケラ

「あれ!」


ここは...前にも見た草原...可愛い花がたくさん咲いている場所...ああ、ここあの夢と同じ場所ね。


「ごめんね、急に君を呼び寄せる事になってしまって...でも急いでいてね、仕方なかったんだ」


振り向くと夢に出てきた女の子が掌にぐったりした小さな黄色い鳥を乗せて立っていたわ。


「その子は?」


よく見るとピッピちゃんとおんなじオカメインコだけど、ピッピちゃんより小さい気がする。


「この子はエステルの『目』でもある小鳥の魂のカケラ、君に託さなきゃと思ってね」


「ピッピちゃんの?」


「うん、なんとか止めておいたけど、早くしないと死んじゃうから」


「え!」


ピッピちゃんが死にかけているって事!


「エステルとこの小鳥は強い結びつきがあるから、今は死なせるわけにはいかなくてね...」


「だれがそんな...」


「リュシフェルだよ、最も強いエステルの介入をさせない為にね」


女の子は眉を顰めて忌々しくそう言い捨てるわ。


「リュシフェルが!」


「リュシフェルはダンダリオンを...いや...それを糧にして『数多なる悪霊 レギオン』の本来の力を目覚めさせようとしているんだ」


「レギオン...ディビッドが言ってた大悪魔!」


さっき話していた大悪魔...封印されていても影響を及ぼす厄介な存在って言ってたわ。


「そう...まぁ詳しくは『白の射手』が教えてくれるから今は話さないよ...まぁダンダリオンはまだ封じられて10年程しか休んでないから本来の力を用いられないけど、レギオンの糧には充分だろうからね、それにしても封印式を解除させる技を人が編み出すなんて...しかもリュシフェルがそれを知ってしまった」


「アンドラスの時の例の術士が編み出したって件?」


確かあの件は極秘になってるはずよね。


「そうなんだよ...でもそれすらも、ハイラントの誕生とリュシフェルの頭を砕く為には必要だったのかもしれない、悪魔は復活させなきゃ滅ぼす事は出来ないから...それも因果なのかもね...」


女の子はピッピちゃんの魂のカケラである小さいオカメインコを私に差し出す。


「さぁ受け取って...『白の射手』には悪魔達を倒す事に注力してもらわなきゃいけないから小鳥の事は君に託すね...」


「でもどうやって?」


「大丈夫、すぐに分かるよ...あと『白の射手』がピンチになった時には君の力が必要になるから、彼も助けてやってね。」


ふわり、と宙に浮いて私の掌のピッピちゃんの魂のカケラが乗せられる...小さいけれど暖かいわ。


「ピッピちゃん...助けてあげるからね...」


「君にお願いばかりでごめんね...そしてエステルの事を助けてやって...あの子は責任感が人一倍強いし、自分の幸せよりも他の人の最善を選ぶ子なんだ...」


「お姉様を?」


「うん、全て君にしか出来ない事だから...」


女の子のお願いに頷くとその子は微笑む。


「ありがとう、『白の射手』もエステルも私の大切な子供達なんだ、じゃあね」


女の子が手を振ると辺りが真っ白になるわ。

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