愛おしい君 その4

全ての術力を受け渡したバレンティナはぐったりとして目を覚さない...きっと術力枯渇の為だ。


これは奇跡を起こしたとしても回復されるものでは無い。


術力は精神に直結する為、枯渇すれば精神がすり減る。


その結果、数日間深く眠り続け弱っていく者もいれば、鬱状態で自殺をしたり、幼児後退を起こしてしまったり、食欲や性欲などが強く出てタガが外れた様に暴食に走ったり、娼婦を壊れるまで抱き潰したりといった症状が出る。


どんな症状が出るかは、個々のトラウマや我慢している欲によって変わって来る為どうなるかは分からない。


医師に診てもらい、症状に応じた薬やカウンセリングで三日から一週間かけて治すしか無いのだ。


そうやってディビッドが離宮から出る...シルヴィオがそれに気がつき近寄る。


「ティナ!」


先程妹バレンティナとは思えない、強い威圧感を放ちやって来た姿から、ぐったりと気を失った姿に変わって心配する。


「お義兄様...ティナは術力枯渇で倒れたので、人目のつかない場所へ休ませたいのです」


「術力枯渇...副反応が起こりうるな?じゃあ専門の医者を呼ぶ、屋敷の方に...」


ディビッドとシルヴィオにサヴェリオが近づいて来る。


「『白の射手』よ、ご苦労であったな...話は聞いた、バレンティナの為に直ぐに部屋を用意を...余の専属医師も直ぐ呼び寄せてやろう」


「...ありがとうございます」


「礼など良い、ダンダリオンを滅ぼしてくれたのだ、それに応援もできなんだしな...そのくらいさせよ?」


サヴェリオはそう言って近くに居た従者に指示を出すと、従者は先に城の方へと向かう。


ディビッドは眠り続けるバレンティナを愛おしそうに見つめ、バレンティナの頭を頬ずりする。


「ティナ...」


光の雨が段々と止んでいくと辺りはまた再び暗くなってゆく。


悲しむディビッドの為に...そしてマキシムやジョナサン達多くの犠牲者を救って欲しいと思って、自らを犠牲にして愛を注いでくれたからこそ出来た奇跡が止む。


マキシムやジョナサンが生き返ったメイド達を誘導して離宮から出てくると、段々と騒がしくなる。


そう、この事件で最終的には死者は出なかったとは言え、側妃グラティーナの罪の事、王女や王子の件など問題が山積しているのだ。


縛り上げられたグラティーナの尋問、受肉の媒介となったレメディオスは精神的におかしくなったのかあうあう、と言ってばかりだ、今後この二人がどうなるか、それとサヴェリオの二人の子供達に対しては母達の件により、立場がどうなるか分からない...


サヴェリオは悪魔に関しては憎しみや嫌悪と言った感情しかないため、例え側妃であったとしても処分は躊躇なく執行するだろう。


だが騒々しくなる周りとはお構い無しに、ディビッドはそのまま最愛の人であるバレンティナを抱きかかえ、城の方へと向かうのだった。

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銭ゲバ令嬢、なまぐさ司祭に溺愛される 野良ぱんだ @norapanda9981

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