ハイラントとディビッドの過去
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※半分説明回
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それは聖典の初期に書かれている一節、元々天の使いだった悪魔達が最初の悪魔であるリュシフェルに唆され、人間から崇拝されたり肉欲に耽ったりしたいがために堕天したもの達の話。
堕天し悪魔となった者達は受肉し好き勝手にその力を使い人間の世で富や名声、崇拝され、あろうことか人間と交わり子を為す罪深い行いを続けていた。
悪魔と人間との合いの子達であるゴライアスと呼ばれる残虐な巨人が地の大半にまで増えてしまい、その不自然な状態に神は怒り一度世界を滅ぼす事を決める。
ただ唯一、神への強い信仰心のあった混じり気の無い人間ルーエンとその一族のみ滅びに至る事のない地に住まわせ世界は火と硫黄の海に飲まれ一度滅びに至る。
その際に悪魔達は生き残るために肉体を捨てその心臓を翡翠石で出来た禁呪の書き板に埋め込み、その姿となり各地に散らばった。
悪魔は書き板の姿で人の肉を用いて、自身を具現化し、自身が望む事を行う。
そのリュシフェルこそ、堕天...すなわち悪魔そのものを生み出した元凶、神は罪深き最初の悪魔リュシフェルにこう言った。
『最も罪深き者よ!ルーエンの血から続く人の子『ハイラント』は四人の騎士を引き連れて、お前の頭を砕き滅ぼす!』
そしてハイラントは更に導きの預言者マーシャの子孫と信仰の元残った生贄の娘の子孫を通じ、誕生する事を示唆する言葉を残す。
『信仰の人よ、貴方と貴方の子孫はその信仰によって護られる、そして貴方の子孫は悪魔の頭を打ち砕く王笏となるだろう』と。
その数千年後に、預言に悪魔そのものを滅ぼし絶やす者の祖が現れ、そこから系譜が発生する。
その系譜、『悪魔の頭を打ち砕く王笏』と呼ばれるのはその系譜の中でも世代でただ一人だけしか存在しない。
その者は悪魔の心臓そのものである、『禁呪の書き板』を砕き、滅ぼすことのできる唯一の存在、そしてそこから延々と『ハイラント』へ続いていく。
現在『悪魔の頭を打ち砕く王笏』はディビッドであり、彼のみが悪魔を滅ぼし、『ハイラント』に続く子の父となれるのだ。
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「当初先に産まれた私が『ハイラント』に続くと思われていたけど、あの子が...ディビッドが発見された時はっきり分かったの、ディビッドこそがハイラントに繋がる者だとね」
「産まれた...じゃなくて発見って?」
お姉様は少し黙って考えてから口を開いたわ。
「...かわいそうに、母から産まれた時、茶色の髪と紫色の瞳から母の言い分も聞かないままに...父に不義の子と見なされて、死産という事にして秘密裏に遠いロストックの孤児院に捨てられたのよ」
「え」
余りにも衝撃的な事実に驚きを隠せない。
「本来ならば、『悪魔の呪い』であるこの色が必ず現れる筈と皆思っていたから...特に強い呪い...でもあの子はその呪いから解放された子供だったの、茶色の髪と紫色の瞳はその証、しかもきちんと理解していれば名だたる賢者の色が現れるのだって分かっていた筈なのに」
お姉様は自身の髪をひとつまみ掴みながらそう話す。
生贄の烙印...特にディビッドとエステルお姉様の家系はその呪いが強く現れ、必ずと言っていい程、緑色の髪と薄桃色の瞳を持って産まれる。
だからそうではない色で産まれたディビッドは、不義の子として認識された...
「そんな」
「あの子は孤児としてロストックで12年、フラウエン教会の孤児院で生活していたのを、神託を受けて私が直接向かったの...一目見て分かった、死んだと思われた私の弟だと、だから私が連れ帰り私とマキシムが教会や社会に馴染む様に育てた、もうその時点で私は預言者としての立場を得ていたから、全て私の権限でディビッドの戸籍も復活させて、ハイラントに続く子供と認めさせる為、本人に選ばせてから厳しい修行をさせて、悪魔を滅ぼし絶やす事を証明させることで今があるの...ただ捨てられた事実はきっとあの性格に影響したのかもね...飄々としながらも笑顔でいる事...あれは自分を守るための手段だろうから、でもね...それを哀れに思って育てた私が甘かった...」
お姉様は顔に手を当てて、大きくため息をついた。
「...ディビッドに会ってもいいですか...」
「ダメ...あの子には反省させている最中、暫くティナちゃんに合わせない事自体が罰だから」
「ディビッド...」
その話を聞いて胸が潰れそうで...会いたくて仕方ない...抱きしめてあげたかった。
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※説明部分は預言者エルマの話からそのまま引用している感じに近いです。
読まなくてもいい様には書いてますが、気になる方はぜひそちらもw
因みに今後詳しくは書く気がないからさらっと書きますが、ディビッド母は産後の肥立が悪かった上子供を捨てられた事がショックで数日後死亡、父も母が死んだ事がショックで後妻も取らずその5年後悪魔討伐中に死んでいます。
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