愛おしい君 その1
『上手く祓えたね、『白の射手』』
労いの言葉をかける、ハイラントの祖となる預言者。
ディビッドは銃を下ろすと銃も自身の変貌も全て戻るとがくり、と膝が折れる。
「限界...ですかねぇ...」
ディビッドは持っていた銃も手から溢れる様に落とし、力尽きてしまったのか座りこむ。
『君はそもそも2体の悪魔を倒したんだ、良くやってたよ...』
「その言葉、貴女よりティナから聴きたいですよ」
『見た目と言うか身体自体は彼女だろう?別にいいじゃないか?』
覗き込む顔はとても愛らしいが、作る表情がバレンティナとは全く違う、むしろ姉であるエステルに似ている所が何とも言えない気持ちになるのだ。
「中身が貴女と言う時点で違うんですよ」
疲労困憊ではあるが、睨むくらいは出来る様だ。
『はは、まぁそうだね』
ディビッドはため息を吐く、そして肝心の事を尋ねる。
「ジョナサンとマキシムの復活をお願いできますか?今の私には無理だし貴女が出張ったって事は姉上はまだ動けないでしょうから...」
期待はある、今となってはエステルが扱える奇跡である復活を
『いや、私の役割はここまでなんだ、悪いね』
とても申し訳無さそうな表情を浮かべる。
「...そうですか...」
ディビッドはそう言うと顔に手を当てる...目尻から涙が頬を伝う。
現在
特にジョナサンの肉体は先程のレギオン戦で損傷が激しい上、時間が経てば二人を生き返す事が難しくなるからだ。
『泣かないで、でも君の花嫁である
そう言ったと思った後、表情は変わりディビッドに抱きつく。
「ディビッド...」
「...ティナ?」
バレンティナに憑依していた預言者は居なくなったようだ、抱きついているバレンティナは本人なのだと思うと気が更に緩んだのか、更に泣き出してしまう。
「私の判断の甘さが...マキシムとジョナサンを...」
バレンティナは倒れている二人に目をやり、事の大変さに気がつきディビッドの頭を撫でる。
助けられないかも知れない二人に対しディビッドが後悔で打ちひしがれている。
ーーーお姉様はディビッドを守るために、他の3人は死ぬ事すら覚悟してるって言ってたけど、ディビッド自身はそうじゃ無いのかも...
バレンティナはそう思う、エルコラーロで起こった奇跡をディビッドが行えば...でもディビッド自身がもう動けない程になっている。
ーーーピンチの時助けてあげてね
夢で出会った少女の言葉を思い出す。
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