封印都市エルコラーロ その2
封印式の構築方法を細かく書き留める術士達は、自身が行うならと思うも難しいだろうなと、ため息をつく...確かに原理などとても良くわかるが、この規模をたった二人で組むなんて無茶だと思うのだ。
しかしそんな中一人の青年だけはその構築方法に対して他の見方をしていた。
結界を担当する術兵士の一人である、セルジオ ジーナ曹長である。
背はそこそこ、髪はやや赤みを帯びた茶色でオレンジ色の瞳の地味目な青年、スペルソードマスターの称号持ちでもある。
彼は封印式の解放についての方式を密かに探る事...研究者として単に知識欲の為にやっている。
悪魔の犠牲や人間が組んだ時間以外に解放させる方法、組む事ができれば解放させる方法だってあるだろうと思い、いつも封印式を見ては解放する方法を頭に回らせていたのだ。
まず基本部分は変わらないからこの中心の複雑な部分を別の式で組み変えれば...いや、きっとそんな簡単には出来ないか?
中心部をじっと読み解き、セルジオは考える。
「気になりますか?」
と後ろから声をかけられてびっくりし後ろを振り向くと、その封印式を編み出したディビッドがニコニコしていた。
「あ!いやなかなか面白い封印式だなと」
「まぁ普通こんな式考えませんもんね、普通なら5、6人で組む用に分割させるのを前提にするけど基本図以外は全部一人で組みますからね、その分ムラが無いんですよ」
整った顔立ち...アメジストの様な瞳の青年の微笑みにどきりとするセルジオ、女性よりも美しくて色気のある青年に同性ながらも見惚れてしまう。
「綺麗な...」
ついセルジオはそう口に出す。
「?」
「あ!綺麗な封印式で!」
「はは、そう言って下さると嬉しいですね!」
自分で何を言ってるんだと驚くセルジオ、自身が女性ならきっと惚れてしまいそうだ...と思ってしまう。
「おい、ディビッド...」
大柄の鎧兜姿の男にその青年、ディビッドは呼ばれてそちらへ向かう。
大柄の鎧兜姿の男と、更に背の高い男の3人で何か話をしている姿をセルジオは見つめる。
「では私達は一度戻ります、明日エルコラーロで」
と微笑み去っていくディビッド達。
「いやぁ、封印式を組み上げるわ悪魔を倒すわで有名な『白の射手』...あんな色男で赤を宿す瞳持ち...とんでもないハイスペックだよなぁ」
セルジオの同僚はそう言って笑う。
「綺麗な人ですよね...」
「ん?まさか惚れたとか」
「まさか!」
流石に自身はノーマルだ、男に惚れる事は無いと思う。
「はは、でもきっともう婚約してんだろうな、左薬指に婚姻の契り印刻んでるし、思うにかなり嫉妬深いタイプなんだろうなぁ」
「?」
「制約印知らないか?あれは両方の浮気防止の印みたいなもんで、かける側と受ける側で印の図柄がちょっと違うんだ、で『白の射手』はかける側の印...まぁ相手の事が好きすぎて囲う為に刻んだ可能性が高いと見た!」
「ええ?あんな綺麗な人が?」
あの見た目で浮気はされないだろう?とセルジオは思う。
「いやぁあれは嫉妬深くて裏切りとか絶対許さないヤバい男だよ、普通契り印はどちらかが死ぬまで有効だが、あれ自分が死んでも相手側に制約を続ける様にしてるしな...自分が死んでも他の男に渡すものかってとんだ執着心だよ」
「ええ?」
「封印式とか勉強する上でその辺の制約印の勉強もしておくのも手だぞ?結構通じるものがあるからな...まぁその辺って『彼の神』の司祭職の十八番だからそのあたりも勉強する事になるがな」
同僚は笑いながら封印式の図案を見る。
「天才なんてどっか欠けてるって言うけど、あの男はそこが欠けてるんだろうなぁ...ああ怖い怖い」
同僚はそう呟く...ただセルジオはとてもそう思えなかった。
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