アスタルト受肉

折角学校できちんと学んでアルケミストの資格まで取れたのに、一般人の女性だからってちゃんとした仕事にありつけず、小さい王都のアクセサリー工房で石を削る仕事を続けていたの、いろいろ人生に疲れていた頃だったわ...


最初に出会ったのは人気だからと仕事帰りで誘われたパティスリー『フィオーレ・ビアンコ』でだったわ。


とっても素敵な笑顔で微笑んで、オススメですよとフルーツタルトを買った時だったわ。


背も高くてアメジストの様な瞳、とても素敵な笑顔で私を迎えてくれたの...


でもその笑顔はみんなに見せているモノだとすぐに気がついたわ...でもそれでもいいのと思っていたの。


毎日通って毎日オススメされたフルーツタルトを買って食べるのが毎日の活力になっていたわ。


そんな時に流行りなのか雑貨屋で販売する『恋愛成就のお守り』を作る事になったと工房で言われたの。


半透明の石を術式で削ってハートの形に変える仕事を延々と続けていた時だったわ、工房の経営者が翡翠色の板のようなものを持ってきたの。


「なんか不思議な男がこんなものを売りつけてきてな...どうやら恋愛成就に関係するお守りの力を増幅させるとか何とか言ってたが...」


と言って工房の暖炉の上に置かれたその翡翠の板にとても強く惹かれたの...


そしてそれが置かれて以降、恋愛成就のお守りが効果があったととても売れ行きが良くて増産すると工房の経営者が言い出したの...毎日がだんだん忙しくなって帰りも遅くなって...『フィオーレ・ビアンコ』へ通う事もできなくなる程だったわ。


行かなくなったらとてもとても会いたくなってどうしても会いたくて...その気持ちをふつふつ積もらせて仕事を続けていた時だったわ。


『その思いを成就したいと思わない?』


翡翠石の板がそう語りかけてきたの...


もしかして幻聴???と思ったわ、でもそうじゃなかった...明らかにそう私に語りかけてきたの。


「成就させたいわ」


そう答えると翡翠石の板は手に取る様にと訴えかけるので仕事の手を止めてそれを手に取りに暖炉へと足を向ける。


両手でその板を持ち上げるとそれは私の胸元に飛び込んでズブズブと身体に入っていったわ!


それから急に身体が変化して軽くなってとても気分が高揚して同僚や上司や経営者達の心臓が欲しくて欲しくてたまらなくなったの!


こいつらの所為でフィオーレ・ビアンコへ行く事ができなくなったのよ!


皆の心臓を贄にして真の力を手に入れるの!!!!


最初に近くにいた仕事が遅いですねと言ってきた生意気な後輩の女の子!


次にはたったちょっとのミスをグチグチ言ってくるお局様のオバサン!


その次はムカつく経営者、次々と同僚達の10人全員の心臓を抜き取って行くわ!


あははは!とってもいい気味だわ!


私の事化け物って言いながら逃げ出すけどみーんな痛ぶって心臓を抜き取ったわ、皮膚を裂き肋骨を砕いて開きドクドクと動いている脈打つ心臓を抜き取るの!


みーんな苦悶の表情を浮かべてていい気味よぉぉそうやって全員贄にしたわ!


あははは!力が満ち溢れるわぁ!


さぁ待ってて!愛しい貴方!愛しい愛しいディビッド!!!!


貴方の心臓!貴方の心臓を手に入れて一つになるのよ!

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