狙われてる? その1
海沿いまで歩くとだんだん波の音が...港が見えて来たわ!
「潮風が気持ちいいわね」
小さい頃からずっとこの風景を見てきたけど、やっぱりエメラルドグリーンの広がるイオーゼ海は良いわね...
「姫様、日焼けしちゃいますから日傘ささないと」
アンナから日傘を渡される。
「ありがとうアンナ」
日傘をさして海の方を見る。
港には沢山の船...前は海賊が出ていたからこんなに船も無かったものね、一人で港に絶対言っちゃダメって言われてたし。
「海!」
ジョナサンは目を見開いて見るわね、まぁ元々山岳地帯と荒野が見えるロストックや陸地しかないエアヴァルドしかいないなら珍しいものね。
「海をここまで近くで見ることなんて初めてだな...」
マキシムさんはそう言って海を見る。
「いろいろあって来れませんでしたしね...」
ディビッドも同じように海を見つめる。
そうよねぇ...確かみんなで海にって言ってたのにいろいろありすぎてまだ行けてなかったものね。
「ベルガモにいる間にみんなで一度砂浜まで出て遊びましょ、楽しいわよ」
「わ!楽しみ!」
「いいなそれ!」
ジョナサンとマキシムさんは嬉しそうに言うけどディビッドはやや不満気ね...まぁ二人だけじゃ無いとって感じなのかも...
ちょっとアンナの目を盗んでディビッドに近づく。
「それこそデートに二人で砂浜まで行きましょ?」
こそっと小声でそう言うとディビッドはとてもいい笑顔になるわ...朝に約束したしね。
「姫様!」
アンナが呼んでる、怪しまれないうちに戻らなきゃ。
「じゃあアンナの目も怖いから」
とアンナの元へ...どうもディビッドの事敵視してるからね。
───
街のあちこちを散策しながら紹介し、日も傾きかけた辺りで屋敷へと戻る。
屋敷への道は広い道をそのまま歩くと遠いから近道になる細い道を選んで帰宅中、3人が明日以降どうするのか気になって振り向く。
「そう言えば明日から3人はどうするの?」
「ああ、明日は基地で細かい話し合いをして、明後日エルコラーロへ向かって二日ほどそこに滞在して、封印式を構築させる予定らしい...まぁ俺は今回この二人の付き添い役だな」
マキシムさんはそう答える。
「まぁマキシムは僕らと違って術式系はまるで駄目ですから」
「まぁ仕方ない...俺の資質は騎士だし黒髪だしな」
「?」
黒髪だからって術士になれない訳じゃないけど...
「エアヴェルドの王族は普通金髪...そこそこ術士の力もあるけど、唯一黒髪に産まれて来ると全く術が使えないんです、ですが剣士としての能力がずば抜けて高いんですよ、かつての英雄王のように」
ディビッドはそう説明する...エアヴェルドの英雄王は数百年前に、国を二分する事態をその剣で収めた若い王...フラウエン教会に飾られた預言者の少女と同じ時代を生きた王。
でも数年もしないうちに王族から籍を抜いて腹違いの兄弟に王位を明け渡した事でも有名な王ね。
「はは、英雄王は言い過ぎだディビッド...いくら黒髪で産まれても俺は英雄王の直系じゃないしなぁ」
マキシムさんはそう言って笑うけど、どこか憂いを感じるわね...王族を離れて神殿騎士になった理由と関係があるのかしら?
「そう言えば...さっきから何人かにつけられているみたいだが、きっと大した連中じゃ無いからそのままにしておいてたが」
とマキシムさんが言い出したわ!ええっ!
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