浜辺デート その2
ヒールのある靴だったから靴を脱いで素足で白い砂浜を歩く。
砂の感触が懐かしいわ...よく子供の頃ここにお兄様と来ては遊んでたのよね。
「だんだん日が暮れて来たわね...」
夕日が海に溶け込んでいくわ...
「綺麗ですね...」
私の横にディビッドは立って一緒に夕日を見つめる。
海は赤く染まり、周囲の空は徐々に夕闇へ変わる姿...
ふとディビッドの方を見ると海の変化する姿をじっと見つめている。
「綺麗よね...」
「エアヴァルドでは見ることのできない風景ですね...」
ディビッドの故郷のエアヴァルドは陸地で標高も高い地帯でもあるものね。
「そうね...」
「ティナは...」
「?」
「ティナは此処から離れたくは無いんですか?」
ディビッドがやや不安げな顔で聞いてくるわ。
「...そうね...でも私はどこで生活しても大丈夫よ」
「?」
「だって12から王都で生活してたし...結婚してこの地から離れる事は当たり前だって思ってたから」
もう此方に戻って住む事は出来ないくらい小さい頃から覚悟は出来てるもの。
「そうですか」
「でもたまにこうやって里帰りはしたいわ」
「里帰りくらいいつでも許しますよ?まぁ代わりに私も一緒にですがね」
「そう言うと思ったわ」
ディビッドはそんな風に笑顔を見せてくれる...
そんなやり取りをしながら話をするわ...たわいの無い事かもだけど大切な時間。
足元に貝殻が落ちてるのに気がついて拾う...今日の記念に持ち帰ろうと思って。
「貝殻ですか?」
「今日こうやって貴方と一緒にいられた記念にね」
ディビッドもまた違う貝殻を拾う。
「こう言うものを手にするのも初めてなんですよ...」
「海初めてなんだものね」
「ええ...」
ディビッドは手に取った貝殻を見て...そして此方を見つめる。
「ずっと...ずっと一緒に居てください...こうやってティナと喜びも悲しみも分かち合いながら生きて行きたい...」
真剣な眼差しで、その深いアメジストの様な瞳を向けて。
「ふふ、当たり前でしょ?そもそも嫌って言っても別れる気なんてさらさらないくせに」
「...」
ディビッドはそのまま私を抱きしめると、持っていた靴と貝殻を落としてしまう。
「私は貴方の事ずっと好きよ、確かに子供っぽいしわがままだし、エッチだし自分の我を通す所はあるけど」
「善処します」
「善処ってもう!...でも優しいしお菓子も美味しいしカッコいいし...何より私を一番に思ってくれるもの...」
「当然じゃ無いですか...」
「きっと預言とかそういう事が無くても、私きっと貴方の事が好きになってたと思うわ...」
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