シルヴィオ アルカンタルという男

「ふー...流石ベルガモの腹黒領主...いやイオーゼ海一帯を仕切る海賊共も恐れを為す『ブラッディヘッド シルヴィオ』と言った所ですかねぇ...」


ベルガモはイオーゼ海に面した広い領地で海賊が出没し荒くれ者も多い土地でもあり、現在の領主ジャンマリオはそこを治めるには全く頼りにはならなかったが、息子のシルヴィオが代わりに仕切って以降は嘘の様に静まり返った...


理由は簡単...シルヴィオが齢18の時にバールのようなものを片手に南ウルムの裏社会を仕切ってた巨大組織を完膚なきまで叩き潰し、完全掌握した上で南ウルムの裏社会のドンとしての座も手に入れて収まっているからだ。


表舞台では父ジャンマリオが騙されて作った借金を全てチャラにさせた上、騙した連中全てに、『慰謝料』という名目で脅して倍の金を搾り取った事から『銭ゲバ侯』とも知られるが、裏社会では赤い髪が返り血で更に赤くなった事から『ブラッディヘッド』の異名の方が有名なのだ。


まぁそんな事きっと可愛いバレンティナには隠しているんだろう...とディビッドは少し遠い所からタウンハウスの窓を見つめる。


3人で談笑しながら夕食を楽しんでいる姿が見えるとちょっと羨ましいな、と思いつつそこを後にする。


「今度『お兄様』って呼んでもらうのも良いですねぇ」


と不埒な事を呟きながら。


───


シルヴィオはダリオと執務室で2人だけで話をしていた。


「あの男が来たのか?」


ダリオはシルヴィオに尋ねるとシルヴィオはああ、と返事をする。


「アレは危険な男だ!即刻バレンティナと引き離すべきだと!」


「いいや、此方の味方の内なら危険も何もない...そもそも人殺しが出来ない筈...きっとあの男が『英雄の盟約』によりエアヴァルドからやって来ている連中の1人だろうからな」


「は!『英雄の盟約』って!」


「軍部にいるなら分かるだろう?長年ウルムを悩ます悪魔共を倒す為に派遣されている、トラウゴット教の上級異端審問官...悪魔討伐のエリート中のエリートだ」


「確かに派遣されている噂は聞いたが...」


ここ数年悪魔の解放が相次いでいる事は、軍関係者内では周知の事実だからだ。


「もう少し周りを見た方がいいぞ、ダリオ...ちなみにその1人はエアヴァルドの王弟マキシマム殿下で間違いは無いが、『本命』はさっきの男だろうな」


「?」


「上級異端審問官と呼ばれる存在はたったの4人、しかし悪魔を滅ぼせる存在はただ1人で『白の射手』の称号を持つ男だけだ...噂だと今代の『白の射手』は珍しい紫色の双眸の持ち主...英雄マテウスの義理の息子の血が顕著に現れているとの事で、サヴェリオ国王が一目見た際いたく喜んだらしいからな」


ダリオはディビッドのアメジストの双眸を思い浮かべる。


英雄マテウスの伝記に載っている、義理の息子との盟約...トラウゴット教に改宗しそこで出世した義理の息子が育てて貰った恩から、マテウスに悪魔を滅ぼす血を持つ者をウルムへと派遣するとの盟約の話を思い出す。


その義理の息子は賢者の血筋で、四大術式系統の一つ武器等に術式を付与させる『スペルソード』の概念を編み出した天才、紫色の瞳を持っていた事でも有名な人物でもある。


「我が妹も大した男を釣り上げたものだ、こんな面白い話も無いだろう?ダリオ?」


シルヴィオはそう言って笑いながら葉巻を嗜む。


「この話はここまでだ...ダリオ、『同窓会』の打ち合わせとしようか...#ウチのシマ__南ウルム__#を荒らす連中だがな...どうやらヤバいモノを競売にかけては荒稼ぎしてるらしい...」


と言って数枚の写真を机に広げる。


「盗品、性奴隷...そして『禁呪の書き板』だ」


写真には闇オークションで競売にかけられる『商品』達が納められているがその中に『禁呪の書き板』が存在していた。


─────

※英雄の盟約なんてカッコつけた書き方してますが、実際はねぇ(汗)

気になる方は預言者エルマの7章の2話目を見て頂ければw

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