準備は整った!

「お!ディビッド!戻って来たか!」


フィオーレ・ビアンコの2階のダイニングに戻って来たらマキシムがスーツケースを2つ持ってやって来ていた。


「マキシム...ああモーニング出来上がって来たんですね」


ケースを開けてモーニングを確認するディビッド。


「なぁ...俺の持ってる奴とどう違うんだ???」


マキシムにはどうもその差が分からない。


「全然違いますよ...分からないんですか???」


「マキシムに言っても無理です、センスがないから」


マキシムは呆れ顔のジョナサンのウルム語の丁寧さになんとも言えない表情をした。


「何だか不気味だな...ジョナサン」


『はぁ?仕方ねぇだろうが!出来るだけ綺麗なウルム語話さねぇと、スザンナさんに合わせないってディビッドの嫁が言うから練習してんだ!』


ジョナサンはエアヴァルド語で話すが、こちらはいつも通りである。


「スザンナさん?まさかお前...くくっ」


マキシムが吹き出してしまう。


「失礼です!ぼくは本気なんです!」


「とうとう初恋か?だははは!」


「笑うのは失礼です!」


そうジョナサンが言うが、マキシムの笑いが止まらない。


「しかも何だか丁寧な割に言葉のチョイスがおかしい過ぎて...」


「あーわかります、それで初恋とか...くくっ」


ディビッドも笑い始める。


『うっせえわ!てめえら!』


流石に耐えられず、ジョナサンがエアヴァルド語で怒るも2人は笑う事を辞めない。


「はは...まぁいいや...、で変装用には?」


「...これ使って下さい、髪と目の色が変わります。」

(これを使え!髪と目の色変わるからな!と言っている)


と髪留めの小さな黒いピンとマスカレードマスクを出す。


「ピンはこちらが金色へ、でこちらが赤に変化します...そしてマスクで瞳の色も変化しますが、ウルム人に多い緑色にしました」


とジョナサン自体がピンとマスクを装着すると髪が金色へ、瞳は緑へと変わる。


「これなら大丈夫だな...じゃあ俺は赤に」


とマキシムは赤く変化するピンを取る。


「ん?」


「金髪にすると兄上にそっくりになるから嫌なんだよ...」


ふとエアヴァルド国王の顔を思い出す...確かに金髪になるとマキシムは国王そっくりになるな...と思う。


「ああ...了解です」


眉をひそめるマキシムにディビッドは納得すると、ピンを髪に留める...色がみるみる内に金髪に変化した。


「...俺より王子様っぽい...」


ただでさえ見た目がイケメンな為か、金髪に変化したらより豪奢に目立つ見た目になるのは仕方ない。


「...裁きの鉄槌喰らいたいですか?それとも...蝗の災厄の方が...」


昔からではあるが、王子様とか見た目に関してあまり言うと、ディビッドは機嫌が悪くなる。


「いや...すまん」


「今から黒とか出来ないですか?」


「黒にするのは難しいので、これで我慢して下さい」

(めんどくせぇんだよ!我慢しやがれ!と実際は言っている)


「茶から黒だとそこまで変化した風には見えんだろ?」


と気の利かないマキシムがたまには良いフォローを入れる。


「仕方ないですか...」


ディビッドはピンを外すと元の茶色へと戻る。


「まぁ準備は整った...明後日に実行する」


「了解」


ディビッドとジョナサンはそう返事をした。


─────

※きっと部屋は本当なら奴のティナさんに対する無体の為に色々散らかり放題の筈だったけども、みんな例の黒子っぽい使用人達が綺麗にしている...

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