ダリオ モルディード

バレンティナ嬢の事は昔から目をつけていた...


見た目の美しさだけでない...術士の力が強い為だ。


貴族の庶子で認知もされないままの俺は産まれ持った『術士の血』を有効活用すべく勉強しアークメイジにまでになり、軍に入りアークメイジマスターの称号を手に入れ、貴族の爵位を国王陛下から頂くまでしたのだ。


バレンティナ嬢とであれば間違いなく次に産まれてくる子供は強い『術士の血』を引くはずである...そうすれば新たに興したモルディード家は更なる力を持つことができるからだ...それこそ平民から出世した英雄マテウスのようにだ。


しかもあのベルガモの腹黒領主、銭ゲバ侯とよばれる友人のシルヴィオと親族関係になれるのも大きい、実際の所金に汚い所があるが有能で力がある...まぁ笑い顔がどうも悪人顔だが...


グラノジェルス公の息子エスタバンとは絶対に上手くいかないだろうと踏んでいたから、婚約破棄の話が出た時にはすぐに婚約の申し込みをしたが、どうにも良い返事をもらう事がなかった。


それで何とかきっかけが欲しく『同窓会の話』が出た時にシルヴィオに頼ったのだ。


久々に会った美しく育ったバレンティナ...しかしその美しさは年頃だけのものでは無い...なんというか艶やかさが増していると表現した方がいいのか...男知ったのだろうか...


そしてその夜の事だ...3人で夜会話を楽しんでいた時に気がつく...バレンティナ嬢の首筋に赤い所有印を...スカーフで隠してはいるが、帰って来た時には無かったし、まさか執事?いやあの男はずっとシルヴィオと一緒だったはず。


まさか忍び込んで逢引きするような相手でもいるのか?


その時に知り合いの子がエアヴァルドから留学する上でウルム語を教えるから1週間日中は居ない旨をシルヴィオに話す。


どうやらエアヴァルドの王弟マキシマム殿下の知り合いでもあるらしくシルヴィオは快諾していた。


どうにも怪しい為当日付けてみる事にした...そうしたら一軒の人気パティスリーへと足を運ぶでは無いか?


おかしいと思い近隣の店に入り情報仕入れつつバレンティナ嬢が居ると思われる場所をその向かい合う店の2階から確認する。


窓から確かに14、5歳の少年に色々教えているようだ...確かにあんなに赤が入った瞳であれば留学させて術式学を更に学ばせるのが親心だろうと思ったが、それ以上に気になったのが度々現れる紫色の瞳の青年...その店のオーナーで人気のパティシエだと言う、まぁ女が好みそうな色男だな...と思う。


それにしてもあんなにも赤が宿った瞳だろうに何故平民同然の仕事をしてるのか?


そう思ったその瞬間此方を紫色の双眸が向けて来たのだ!


「此方の気配を気づいている???」


冷や汗をかく、アレは一般人ではない!


そして窓際までやって来てニヤリと笑を浮かべて口を動かすのだ。


『バレンティナは私のモノだ、お前になど渡しはしない』


まるでそう言っているかのような口の動きを見せ、レースカーテンを閉めて見えなくさせてしまう。


「チッ!」


まずい...バレンティナ嬢はあの得体の知れない男に狙われている!


そう思うと居ても立っても居られずバレンティナ嬢があの店から出るのをただ待って、帰り道で偶然あった程で共に帰ろう、そして忠告しなければ...あいつは危険な男だと!



──────

※危険には危険だし間違ってはいないからね...ダリオよ...

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