帰り道にて
もう4時になったのでタウンハウスへと帰ろうと支度をすると、ディビッドが途中まで送るからとコックコートから普段着へ着替えてやって来たわ!
「今日はそのまま帰るだけよ?」
「分かってますよ」
うーん本当にそう思ってるのかしらと思って並んで歩く。
「それにしてもティナは教えるのも上手ですよね、あのジョナサンがウルム語の発音随分上手くなりましたもの」
「うーん...あれは半分以上執念の結果な気がするわ...どれだけスザンナと話したいのかしら...」
「エアヴァルドの男は好きな子には情熱的になるものなんですよ」
そうニッコリと笑顔を浮かべる...ええとっても実感してるわよ...ええ。
そんな会話をしている時だったわ。
「バレンティナ嬢!」
声をかけられる...ぞわっと背筋に何か走るものがあるけど、と振り向くとそこにはダリオがいたわ!
「モルディード卿!」
「ダリオで良いと...ん?お前...」
ダリオは怪しむようにディビッドを見る。
「私はそこのフィオーレ・ビアンコというパティスリーのオーナーのディビッドと申します、モルディード様」
そう言って丁寧に一礼するわ。
「バレンティナ様にはご贔屓して頂いておりまして、しかも知り合いの子の勉強まで見て頂いておりまして感謝しております」
「...昨日バレンティナ嬢が言ってた件か...それにしてもその瞳...平民には珍しいな、『赤を宿す』のであればそのような仕事以外つけるだろうに」
紫色の瞳は確かに分かる人ならそうとるわよね...
「はは、私にその才能が無かったので、それにこんなに豊かで平和なウルムにはそこまで武力は必要ないですしね」
とにこやかに話す...でもディビッドのダリオを見る目はどこか挑発的な感じがするわ...
「...まぁいい、バレンティナ嬢とは帰る先が同じなのでな、お前はここまででいい」
「あ!」
急にダリオに肩を抱かれてしまう!
「お辞め下さい...私達はそのような関係にはありませんから!」
そう言うのにダリオは辞めようとせず、行きましょうと言われそのままタウンハウスの方向へ歩き始める。
「...バレンティナ嬢も、パトロンとして支援する男の一人や二人いても良いですが彼は辞めた方がいい...」
「え?」
「アレは危険な男です」
私にはダリオの方が危険な気がするのだけど!
「そんな事は無いわよ、とても優しい方だし」
「...何を言っても無駄かもですが...痛っ!」
ダリオの肩にディビッドが掴みぐっと力を入れたのかダリオの腕が緩んだのでダリオから距離を置く。
『バレンティナは私の花嫁だ...お前などに渡しはしない』
エアヴァルド語でディビッドはそう言う...その瞳の色が...赤みが増した紫色に変わっているわ...
「???」
ダリオは驚いた顔でディビッドを見つめる...
「嫌がる女性に無理矢理な事はしないで下さい、紳士としてあるまじき事ですよ」
「何っ!」
「あとバレンティナ様、また明日待っておりますね」
そう微笑みを浮かべてディビッドは去っていったわ。
「なんて力だ...」
そうダリオは小さく呟いたわ...
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