記念式典 その5
「そうそう、上位貴族だと伯爵ランクからだろうからスザンナ嬢もいるんだろ?」
「え...ええ!」
ジョナサンは顔を赤くして驚く。
「きっと公式の場だし、綺麗に着飾っている姿が観れる良い機会かもな」
ははは、と笑ってジョナサンの肩をバシバシ叩くマキシム。
「す...スザンナさん」
ジョナサンはスザンナの姿を思い浮かべて更に顔を真っ赤にする、ディビッドと違って本当に純情な男なのだ。
「ガキンチョが恋って!うっわウケる!こりゃあお祝いしなきゃっすね!」
「うるせぇ!おっさん!」
サミュエルはゲラゲラ笑い出すと、ジョナサンはサミュエルを睨む。
「まぁ今の姿でかつこんな仮面も着けるし向こうは気づかないでしょうけど~」
ディビッドもジョナサンを見てニヤニヤしている。
「よ...余計緊張してきた...」
純情なジョナサンは片想いのスザンナが見てると思うとドキドキして余計に緊張してしまう。
そんなジョナサンをいい大人が三人で揶揄うとは本当に大人気のない連中である。
「まぁ普通に歩いて居れば良いのよ、こんな恭しい服に仮面までつけるんだから」
とエステルが微笑みながらジョナサンに声をかける。
「あと大人気ないわね、もうちょっと年少の子に気をかけなさいよ~」
「年少って...もう20歳だし...」
ちなみにどうもエステルの感覚ではジョナサンに対して小さい子供の認識が拭えない。
「まぁガキンチョはガキンチョで良いんっすよ」
「だからガキンチョ言うな!」
サミュエルの言葉にジョナサンはむくれる。
そんな中でディビッドは、ある事に気がつく。
立てかけて置いてある杖、セプター・オブ・バーレと一緒にまるで花嫁が使う様な薄いヴェールがかけられている。
「ところで姉上何でヴェールなんて用意したんです?こんなの今まで使った事無いでしょ?」
「ああ、何となくね~」
とエステルは軽くそう言うが、その瞳には何か憂いの様なものを感じるディビッド。
その言葉にぴくりとアーバインが反応する。
「エステル...」
「アーバイン...今はダメよ」
微笑みながら人差し指を口元に当てて、黙る様な仕草をする。
ディビッドは姉であるエステルの企みに気がつくものの、実際何を企んでいるのか疑問に思う。
しかもバレンティナの婚姻に釣り合う為の『身分』を用意した件もだ...正直な所そこまでの『身分』は今の悪魔を倒す使命に邪魔になりかねない。
一体姉エステルは何を考え、何をするのかディビッドは疑問に思う。
「さて...どうやら式典が始まるみたいね、まずアーバインが先だし頑張って!」
とエステルはアーバインの背中を叩くとアーバインはむせる。
「げほっ!エステル!私はマキシムと違って頑丈じゃないんだぞ!そんな力で叩くな!」
「あらごめんなさいね」
ふふ、と意地悪に笑うエステルをアーバインははぁ...とため息を吐くのだった。
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