悪魔サロス その1

エステルの張った結界は、謁見の間の半分を占めており、その結界を以上する為にエステルは謁見の間の中央部に杖を掲げながら立ち続ける。


謁見の間の貴族達は逃げる者もいれば、シルヴィオの様にサヴェリオ国王を守る為にと近衛兵と立ち上がる者もいる。


その姿をサヴェリオは愉快に見ていた...誰が信用出来るかどうかと言う所もだが、直接悪魔を滅ぼす事を『最も安全な方法』で鑑賞出来る機会を得た事もだ。


しかもやって来たあのボロのローブを着た人物には心当たりがある、反逆者である叔父のベネディッドだ、なんとも都合がいい。


「さて...エステル、余にどんな素晴らしい余興を見せてくれるのやら」


サヴェリオは全く動じる事なく、玉座に座ったままこれから始まるショーを楽しみにしていた。



結界内ではボロボロのローブの男を囲う上級異端審問官。


『白の射手』ディビッドは愛用の銃であるエクソダス1922を、『赤の剣』マキシムは波紋の美しいダマスクス鋼製の大剣を、『黒の天秤』ジョナサンは拳に錬金で精製されたガントレットを、『青の大鎌』サミュエルは純銀で出来たチェーンウィップを装備し、それを向ける。


『邪魔しおって!我を誰と思っておる!我はこの国の王ベネディッドぞ!』


男はボロのローブを脱ぎ捨てると、そこにはウルムの王族である白銀の髪とアクアマリンの瞳の青年の姿...ただ半身は裸でその胸には『悪魔サロス』の受肉の印である血で描いたかの様な不気味な紋が胸にある。


「さぁ、私はエアヴァルド人なんで~」


とディビッドはそう言うとその男の頭めがけて銃を一発打ち込む。


パァン!と頭に命中するも、ジュウジュウと黒い霧の様なモノが漏れ出てそのまま頭は再生される。


『そんなもの効かぬわ!』


とディビッドに襲いかかる、その姿は更に変わり緑色のボコボコした皮膚に変化する、まるでワニだ。


「まぁ分かってますけどねぇ」


とまるで挑発するかの様なディビッドの態度に怒り狂うサロス。



「おっと!物理攻撃は俺の範疇なんでな!」


とすかさずマキシムがそのトカゲ姿のサロスの攻撃を跳ね返す。


そしてそのまま衝撃で突き飛ばされるサロスを何本ものチェーンが巻きつく。


『ぐわっ!これはっ!』


「あ~聖化された純銀製の鎖なんすけどぉ、悪魔にゃあたまったもんじゃあないっすもんね」


悪魔は聖化された純銀に触れるとどうやら痺れを感じるらしく動きが止まってしまう。


『術式付与!ゲフリーゲン!』


その間にジョナサンは術式を展開させガントレットに氷属性の術を纏わせると、そのままサロスの腹にその拳を打ち込む。


『ぐぇっ!』


うめくサロスの腹に拳を開き、術式を変える。


『術式解放!』


ジョナサンはガントレットの術式を解放すると、サロスの腹周辺がパリパリと凍り始める。

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