記念式典 その4
ーーー式典の少し前
アーバイン国王はエステルやディビッド達と一緒の貴賓室で待機していた。
アーバインはその顔や体格はマキシムによく似ており、ただ髪色だけ金髪で、エアヴェルドの王族が着る青い衣装を身につけている。
そしてエステルは人前に出る時用の白いローブを見にまとっているし、ディビッド達は儀礼用の司祭服、唯一マキシムは鎧にサーコートで兜は脱いでいる状態だ。
「しかし、エステル...この様な場に出るのは初めてだろう?大丈夫か?」
ソファーに座ってため息を吐くアーバイン国王、マキシムの兄であり、エアヴェルド国王ではあるが、実はエステルとは同い年で幼馴染の関係にありかなり気安い関係だ。
アーバインもマキシムもだが、どうも生真面目で心配性の気があるのか、どこかそわそわしている。
「別に~人前に出るのは貴方よりも多いもの...むしろ貴方の方が心配になるわ」
「確かに...はぁ...」
アーバインは頭を悩ませているのは、サヴェリオに会う事ではなく、この式典後の事だ...その件に関しては自身と教皇とバーレ枢機卿と側近のみで、ディビッド達上級異端審問官達にすら伝えていない。
エステルが決めた事...というより『決まって』いる事で結果も分かっている、そしてその結果についても頭を悩ませているのだ。
アーバインは弟であるマキシムがどんな顔をするのか不安でならないし、前もって知っていればきっと話が拗れるだろうな...と。
「正直もっと前もって相談して欲しい所だが、エステル...それが『最善』なのだろう?」
「そう言う事ね、わかってるじゃん」
「じゃん...て...」
アーバインは大きくため息を吐いたその一方で、
「何だかすごい緊張してきたよ」
と元の姿に戻ったジョナサンが、小さな声で弱音を吐く、誰よりも大柄のくせに。
「引きこもりなんてしてたからですよ、その内もっと人前に出る事になるから慣れておかなきゃ、ジョナサン」
やれやれとディビッドは弱音を吐くジョナサンに言う。
「引きこもりってなぁ、修行と術式解析をやらされてただけで引きこもってないんだぞ」
ちなみにエアヴァルドでは、悪魔の討伐以外では体力維持の為に修行と解析の仕事を散々やらされていた為、好き好んでジョナサンは引きこもりをしていたわけでは無い。
「でもガキンチョ人前に出る事なかったじゃん」
「ガキンチョ言うな!これでもディビッドの店でウェイターやってて多少は慣れてきたんだ」
そう、根は真面目なジョナサン、今もちゃんとウェイターのバイトをしており、弱体化のオドオド姿がそれなりにお姉様方に人気だったりするのだ。
「ただまぁ今回お偉いさんばっかりだしなぁ」
とマキシムはニヤニヤと笑っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます