記念式典 その3

「なんて美しい方なんだ」


「それにしても...あの兵士達か?なんとも物々しいな?」


「しかし何故トラウゴット教の関係者が?」


「あれは例の聖女様ではないか!何とも神々しい」


いろいろな声が聞こえるけど、表にあまり出ないエステルお姉様の姿を知ってる人が居る所から、一部の高位貴族達の中に例の闇オークションに参加してた連中もいるのね。


でもこの場にエステルお姉様が来るって事は陛下の招待があってこそだし、やっぱり悪魔を倒す関係でお礼も兼ねて呼んだのかしらね?


「エマヌエーレ サヴェリオ=ウルム国王陛下、この様な素晴らしい祝いの場にお招き頂き感謝致します」


エステルお姉様は深々と頭を下げるわ。


「全てを見通す千里眼の持ち主...南の偉大なる預言者エステル、待っておったぞ」


陛下が笑顔を浮かべてるわ...その姿を見てみんなザワザワしてる。


「陛下の御世が長きに渡り繁栄する事を...創造主にして忠節なる神にお祈り致します」


「ふ...祈るも何も偉大なる預言者であるエステル、其方には『見えて』いるのだろう?余の身に何が起こるのかが...」


「...ええ...この場で大きな事が起こっても陛下の土台は揺るぎなく、更なる力を得る事を...」


エステルお姉様がそう言うわ...確かにお姉様は預言者だから分かるって事なの?


その会話の最中...謁見の間の出入り口の扉付近から更にザワザワと音がするわ。


目をそちらに向けると一人のボロボロで薄汚いローブを着た人物が入って来るわ!


「一体あれは...」


そうつぶやくとお兄様の顔色が変わる。


「この祝いの席に一体...兵士達は何をやっていやがるんだ」


そのローブを見に纏った人物はそのまま陛下の前へと進んでくるわ、近衛兵達もそれを止めようと集まって来たわ。


「この不届き者め!」


と取り押さえようとするけど、何かの力で弾かれちゃう!


「きゃああああ!」


並んでいる貴族の列に投げ出されて騒ぎ始めたわ!大変!


「ティナ...親父...下がってろよ」


お兄様がそう言って動こうとしたけどそれよりも早くに動いたのは...エステルお姉様を守っていた四人の上級異端審問官達。


一瞬で四人はそのボロボロのローブの男を囲んだわ。


その後ろ...陛下を守るかの様にエステルお姉様はそのローブの男の方に杖を向けるわ。


「僭越ながら私共が陛下とこの場に居る全ての人をお守りいたしましょう」


杖の先から円陣が現れる...あれは結界を張るのね!


「さぁ皆の者!ここから離れなさい!」


謁見の間にいる人々を少しでも遠くに逃す様に促す。


円陣はローブの男と四人を取り囲むと周囲に結界が張られたわ。


お兄様は近衛兵と共に陛下を守るために玉座の方へ向かうわね。


「エステル様こちらに!」


お兄様がエステルお姉様に逃げる様に促すわ。


「シルヴィオ様、大丈夫ですよ...あの程度の悪魔余興にもなりませんから」


とエステルお姉様が微笑むわ、そして上級異端審問官達の方に顔を向ける。


創造主にして忠節なる神トラウゴットの僕よ!悪魔を断罪する使命を受けし四人の騎士よ!」


杖をそのまま掲げて命じる。


「さぁ神の名の元に罪深き悪魔を討ち滅ぼしなさい!」


その言葉を発した直後それぞれが武器を取り出して、ローブの男に構えたわ!

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