寵愛を受ける者の憂鬱 その2

エステルお姉様は弱っているピッピちゃんを膝の上に乗せて撫でてあげると少し光るわ...きっと回復させているのかも。


「ごめんね、ピッピちゃん...」


「ギャ!エステル!エステル!」


痛めつけられたピッピちゃんは完全に回復したのか起き上がってエステルお姉様の肩に乗って頬にスリスリしている...良かった...無事みたいね。


少し和やかさが戻ったと思ったその時、背中がざわつく感じが走る...どうやらエステルお姉様も同じように感じたのかも、顔色が変わるわ。


「エステルお姉様...この感じ...」


「...悪魔だわ...」


その言葉にお兄様とサヴェリオ陛下の顔が険しくなるわ。


「...エマヌエーレ...ダンダリオンが今目覚めました」


「何!封じ込め更に封印も念入りにしているのにか?」


「はい...悪魔サロスが王城へ入る事が出来た為にリュシフェル達が入り込む『道』が出来た...今ディブ達が上級異端審問官達が対処するでしょう」


「念入りに兵を周囲に配置させる、そして余も向かう...」


「サヴェリオ陛下!」


お兄様がサヴェリオ陛下をお止めになるけど、陛下は威圧的な雰囲気を纏わせるわ。


そしてその瞳はアクアマリンのものからアメジストの様に変わる。


陛下の瞳は怒りが現れる時に『赤が宿る』タイプだと聞いていたけど、まさかそれを見る事になるなんて。


「あの悪魔...ダンダリオンだけは...余の血族を根絶やしにしようとした奴だけは許せぬのだ」


周囲がひんやりとする、陛下の...というよりもウルム王家の特性で氷属性が優勢だからかしら...術式を解放させなくても強い感情を持つと周囲にも影響を及ぼすなんて、でもそれだけの力があったからこそダンダリオンを倒せたのだろうけども。


それにしても...あの夢ではダンダリオンよりも恐ろしい存在が...『数多なる悪霊 レギオン』がというをしていた事を思い出す。


そう、その話をしなきゃ!


「エステルお姉様...私の話を聴いて下さい!12番目の預言者様からピッピちゃんの魂のカケラを受け取った時に、ダンダリオンを糧として『数多なる悪霊』レギオンを本来の力を目覚めさせると言ってたんです!」


「何ですって!なら私も向かわなきゃ...ううっ」


エステルお姉様がベッドから出て立ちあがろうとしたけど苦しみだしたわ、大変!


「エステルお姉様!」


「ギャ!エステル!」


お姉様に駆け寄って、再度ベッドへ運ぶ。


「ピッピちゃんと感覚を一体化してた時死にかけた弊害ね...ううっ...リュシフェルめ...私の介入をどうしてもさせないつもりなのね...」


痛みに耐えてとても辛そうなお姉様...かわいそうに...


「エステル、其方は休め!余が何とかする故に」


「陛下...どうか...ディビッドを...弟の助けに...『数多なる悪霊』は恐ろしい存在なのです...」


「分かった...シルヴィオ、お前は余と共に離宮に、バレンティナはエステルを頼む」


とサヴェリオ陛下はお兄様を連れて部屋を出ていくわ。


「ごめんね...ティナちゃん...」


「エステルお姉様っ!無理はしないで下さい!」


「ギャ...」


ピッピちゃんも心配そうにエステルお姉様の近くに寄ってるわ。


ただ...どうかみんなが...ディビッドが無事でいて欲しいと祈るしか出来なかった...

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