VSダンダリオン その1

封じられた離宮、元々はサヴェリオの弟である第五王子の母が住まう場所だった。


元は豪奢な美しい離宮だったのだろう...今はあちこち破壊と劣化で見る影もない場所となっている。


その内部に第五王子の身体を使って受肉され悪魔ダンダリオンが封じ込められている。


ディビッドは内部構造は知っている、何度か入って封印式を組み簡単には復活出来ない様にしているからだ。


しかし人間の組んだ封印式を解除できる技術をリュシフェルが知ってしまったが故に、その解除は形骸してしまったのだ。


ただダンダリオンはまだ10年程しか封じられていない為に、その力はそこまで強くは無い可能性が高い、ただ油断は出来ない。


ディビッドはジョナサンから銀のカフスボタンを返して貰い、再度装着する...精神攻撃から守る為の術式を組んでいる物だからだ。


ディビッド達3人は離宮内部を駆け足で進む、ダンダリオンを封じた部屋まで真っ直ぐに。


サロンとして使われていた広い部屋に入る、その中央部にダンダリオンの封印式が存在している筈だった。


部屋自体は廃墟の様な有様だ、なにせ10年前にここで死闘が繰り広げられてその傷跡が部屋中に残っている。


そんな部屋の中に二人の女がいた...そして周囲には王室勤めのメイド達の死骸が横たわる。


無惨にも全員が血まみれになって倒れている、喉笛を切られてだ。


そして封印式が破られて、禁呪の書き板は不気味に光りながら二人の女の間に浮遊している。


そう...側妃レメディオスとグラフィーナだ。


レメディオスは虚ろな目をしているが、グラフィーナは違う...その目は狂信者の目だ。


「なんて事を...」


ディビッドはエクソダス1922の銃口をグラフィーナに向けて構える。


「うふふふふ...ベール神からの神託があったのよ、真の神であるベール神は妾を巫女として迎え入れる儀式をせよと仰られたの」


「儀式...こんな人の命を蔑ろにする事をか?」


ジョナサンはその惨劇を見てグラフィーナの言葉に怒りを覚える。


「貴様らベール神を蔑ろにする『彼の神』の僕か?」


「ええ、私たちは『創造者にして忠節なるトラウゴット神』に遣わされたですよ、『蠅の王』の


ディビッドはグラフィーナを煽る様な口調でそう言うと、グラフィーナは激昂する。


「ベール神を!偉大なる豊穣神を侮辱するか!」


「『蠅の王』なんて信仰するとか、頭に蛆でも沸いてるんでしょうねぇ、そこに封じられている存在の事が分からない訳じゃ無いでしょうが、悪魔の妄言に騙されるとかね」


「この不届き者が!ベール神の力を思い知らせてやるわ!」


とグラフィーナは禁呪の書き板を手に取ろうとするが、バチッと跳ね返される。


「なっ!」


「だから蛆沸いてるって言ってるんですよ、それは悪魔ダンダリオン、貴女を信仰する『蠅の王ベルゼビュート』とは相容れないんですからね」


「まだそんな事を言うか貴様!」


そしてその書き板はレメディオスの方へ向かい、その胸元部分に沈み込んでいく。


すると周囲から黒い霧が充満し、レメディオスに集まると、ボコボコと音を立てて変化していく。


「何で...この女を贄にする筈が...」


グラフィーナはレメディオスの方を向いて青ざめる。


「悪魔ダンダリオンが復活します...二人とも援護頼みます!」


「分かった!」


「了解っす」


ディビッドの声にジョナサンとサミュエルは承諾し、それぞれの武器を持ち構える。


レメディオスは姿を醜悪な悪魔の姿へ変化する...沢山の老若男女の顔を持つ肉の塊の悪魔ダンダリオンとなって。


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