その頃のジョナサン その1
ジョナサンとサミュエルはエステルの警護の為にダンスホール内の隅っこでじっと二人で立っていた。
因みにマキシムはエステルのすぐ側にいる。
「それにしても人が多すぎて疲れるなぁ」
とジョナサンはため息を吐く。
「まぁガキンチョ初めてだから仕方ないっすよ」
「またガキンチョって...」
ジョナサンに仮面の下の顔は今頃膨れっ面である。
「それにしてもまぁあの王様とエステル様も注目されてるけど、坊ちゃんもなかなかの注目っぷりっすねぇ、まぁ半分くらいは嫉妬心っぽいけど」
「そうだな、人の嫉妬や強欲が濃くて悪魔に好かれそうな状態で危険な気がする」
「いっそ坊ちゃんの中身を全員が知ってもらってドン引きされれば良いんすけどねぇ」
「それは駄目だろ...」
不真面目極まりないサミュエルの言葉に最も年少のジョナサンは嗜める。
「あと王子サマ...あれ諦めてるかどうかも怪しいっすよねぇ」
「マキシムがエステル様の事が好きなのは分かるけど、元々エステル様はマキシムなんて眼中に無かったじゃん...気の毒だけどさ...」
ジョナサンはジョナサンなりにマキシムの片想いを知っている。
「まぁエステル様歳上が好みだろうから、5歳も年下の王子サマは範疇にゃあないからなぁ」
「え?そうなの???」
初めての情報に驚くジョナサン。
「前にも話したっすよね、エステル様のお見合い相手の件...数多くのお見合い相手の中で一番可能性があったのはあの王様だったんすよ?しつこい人だったけど会ってる時エステル様ちゃんと女の子らしい反応してたし」
「ええ...嘘だぁ」
エステルの傍若無人で破天荒で恐ろしい姿しか知らないジョナサンはその話が信じられないが、サミュエルは間近で見ていたからよく知っているのだ。
そう、最後の別れの日に口づけをしていた所も含めて。
そんな会話をエアヴァルド語で二人で話していると、一人の令嬢が近づいて来る。
「!!」
ジョナサンは仮面の下で驚きの顔をする、グリーンのドレスを纏ったスザンナだ。
「あ...あの...」
オドオドしながらジョナサンに声をかけるスザンナ、顔はほのかに赤い。
「どうされましたか?」
サミュエルが打って変わって丁寧に尋ねる。
「あ!ウルム語わかる方なんですね!さっきその仮面が落ちた時に顔がジョナサンのお兄さんによく似てらっしゃったし、ディビッドさんとみなさん知り合いかもだからもしかしてって」
さっきの戦いで一度仮面が取れてしまい、素顔が一時分かった瞬間をスザンナは見ていたのだ。
ちなみにジョナサンはウルム語が話せない設定を思い出してしまってどう返事をすればいいのか分からずパニック状態だ。
「ジョナサンのお兄さん???」
サミュエルが頭を傾げ一瞬にして理解する、一応今のジョナサンの姿は秘密にしているはずだからだ。
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