花嫁の誘い その1
ディビッドはずっと1人部屋に篭っていた。
カーテンを閉め切って部屋は暗く、全くやる気も起きないし食欲も無くてただ天井を眺めている。
髭も剃ってないから伸びてしまったけど誰に見られる訳でもないし...とそのまま、服だって寝る時用のカーキー色のシャツとスボンのままだ。
いつもニコニコとしている顔には表情が無く、たまに自身が行った罪に苦しみもがく日々を送っていた。
あの時の事を思い出す。
ーティナが目を覚さないんです!何度も回復を試みたのにっ姉上!
ーディブなんて事を!死にかけてるじゃない!
ー死?
ーあれほど言ったはずよ!ディブとティナちゃんじゃあ体力や加護が違うから簡単に怪我もするし病気になる!そして簡単にその力のせいで死んじゃうのよ!
ーそんな...
ーああ...こんなか弱い女の子になんて酷い事を...ディブ!貴方は罰を受けなさい!暫くティナちゃんに会ってはダメ!
ーえ...
ー当たり前でしょう!しかも今回の件でティナちゃん貴方の事を怖がるかもしれないわね...だって貴方ティナちゃんを殺しかけたようなものだもの!
ーそんなつもりはっ!
ーそんなつもりじゃくても人は死ぬのよ!馬鹿!
ーあ...ううっ...ティナ...
ー一刻も早く貴方は部屋から出て行きなさい!
「ティナ...ごめん...」
顔を覆いながらディビッドは泣く...会いたいけど会っては駄目だ...力の加減ができないままに...自分の嫉妬の所為で無理矢理抱いて、死なせてしまう所だった。
可愛いティナ...ちょっとつり目でキツそうな性格に見せかけて優しくて、正義感が強くて、美味しいお菓子が大好きで、ちょっとお金に汚いけども、とても可愛いらしい神から与えられた花嫁。
自分に向けられるあの愛おしく見つめてくれる瞳を...好きと言ってくれる柔らかい唇を...傷だらけの身体を受け入れてくれる細い腕を...何度抱いても飽きる事なく愛情と幸福感を快楽を与えてくれる身体を...
「駄目だ...」
何も考えないか、考えても愛する人の事を...そして自身の手で失いかけた事を思い出しては泣いてを繰り返す日々...
「もう!こんな部屋真っ暗にして!空気澱んでるわ!」
「え?」
「良い天気ね...」
カーテンを開き、窓を開けたのは愛する人、バレンティナ...外を見てからディビッドに顔を向けて微笑みかける。
ディビッドは身を起こし、眩しそうに彼女を見つめる。
「だらしないわね...髭も伸び放題だし髪もボサボサ、いつもオシャレな格好してるのに寝巻きのままなんて」
バレンティナはディビッドに近づいて、顔を近づける。
「ティナ...」
「...ちょっと痩せた?」
殆ど食事をしないせいでか若干痩けているように見える。
「食欲が無くて...」
「何か食べる?貴方ほどじゃないけど簡単な物なら作れるから」
「ティナが?」
「ふふ、貧乏だった時お兄様と一緒になって自分達で食べるご飯だって毎回作ってたのよ?」
「でも」
「いい!一度シャワーでも浴びて、その伸び放題の髭を剃って!折角のイケメンが台無しよ?そのあいだに作ってあげるから」
そう言われて無理矢理立たされて、浴室まで連れて行かれた。
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