ダリオ モルディード その2

毎日例のパティスリーへ通っているバレンティナ嬢が心配で向かいの店の二階の窓際の席で様子を見る。


今日もまた例の男...ディビッドとか言うあの怪しい男の元へ向かう。


窓に認識阻害の術式を付与しているが...アークメイジの目をもってすれば阻害はされない...しかし何故そんな高度な術式を???一体あいつは何者なんだ????


一応バレンティナはあの少年に勉強...どちらかと言うとウルム語を話す為の練習なんだろうが懸命に教えているようだ。


彼女は6カ国語を話せる為、教えるに適切なのだろう。


あ!あの男!あいつがやって来た。


カンノーリを出している...チッ、バレンティナに気に入られる為にか...あれはシルヴィオの好物だからな。


3人でお茶を楽しんでいるようだが...ん!


あの男!バレンティナにキスをしている????


え?抱き上げて何処かに連れて行くぞ!おい!


まぁ直ぐにその姿を表すが...寝室か???ちょっと待て!何故バレンティナの服を脱がす!おい辞めろ!


あの怪しげな男にバレンティナが抱きしめられる姿に下唇を噛む。


あの男...顔はいいが身体中に酷い傷痕だらけでとても醜いのにっ!


バレンティナもあんな抉られた傷痕だらけの醜悪な男をあんなにも愛おしげに見つめている...何故だ???


「気づいていないと思いやがって...」


そんな悔しい気持ちが湧き上がる中...あの男は此方に顔を向ける...まさか...今も気がついているのか?


俺が見えている事を見透かして...あの男はバレンティナがお前のモノだと言うが為になのか???


深い紫色の双眸を此方に向けてニヤリと笑う。


クソっ本来なら俺のモノになる予定だったのに!


シルヴィオに伝えねば...お前の妹は得体の知れない男と爛れた関係を続けていると!


そう思って立ち上がると数人の男達に囲まれている事に気がつく。


「?」


「...本来見てはならない神聖な行為を見ていたのか?」


1人の男がそう言い出す。神聖?なんだ??あの行為をか???


「消すか?」


「いや...あまり大事にすれば怪しまれるだろう」


「アークメイジマスターレベルなら...記憶改ざんはまだ可能かと...」


と不穏な話を男達はする...そして1人の男が目の前に立って俺の額に指を向ける。


『お前は先程見たものを全て忘れろ...ハイラントに繋がる母の1人となる為の神聖な行為の全てを』


そう目の前の男に言われると急に眠気に襲われる...一体なにが...


ー「ハイラントの誕生は我々の悲願...とはいえあの方は人が悪い...」


ー「全くだ...きっとこの男に見せつける為にわざとやったんだろう?なかなか嫉妬深い方だからな」


ー「まぁあの方への叱責等は教皇様と預言者エステル様の範疇、我等は淡々と処理するまでよ」


そんな声が聞こえるも...もう気が...遠く...


───


「ん?一体俺は???」


「お客様?もう店を閉めるのですが...」


と店員に声をかけられる。


「あ?ああ...すまん」


どうやら眠ってしまったらしいな、窓の外を見ると日が暮れている...あれ?俺は何故ここに???


店を出てシルヴィオのタウンハウスへと足を運ぶ...


一体今日は何で此処に居たのか...どうにも思い出せなかった。


───

※異端審問官やら使用人達はまぁまぁ狂信的であるので...ティナさんかわいそうに...


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