王都へ戻る日 その2

「俺はジャーマンスープレックスを食らった時何が起こったかわからなかったな!ははは!」


その割にマキシムさんは何故か嬉しそうに言うけどジャーマンスープレックスって結構な大技よ!


「まぁ速攻で復活させてくれるし良いじゃないですか~」


『良くねぇよ!』


ディビッドだってあんなにエステルお姉様に怯えてたのに簡単に復活するだの言うからジョナサンが怒ってエアヴァルド語で叫ぶわ。


「ティナは別に心配しなくて良いですよ」


「心配するわよ!」


エステルお姉様がアルゼンチンバックブリーカーをかけてディビッドの背骨を折った音が今も忘れられないわよ!本当に死んじゃったかと思ったわ!もう!


確かに結婚もせずに妊娠したらしたで外聞悪すぎよ...そんな事言ってもきっと『責任は取るんで』って迫られてなぁなぁにされちゃうだろうけど...


まぁ今の所定期的に月のモノは来てるけど、避妊とか確かに考えて欲しい所よね、でも子供が欲しいって言ってるからそれも難しいかも...うーん...


そう思ってニコニコしているディビッドを横目で見る...


ディビッドにそのアメジストの瞳を潤ませながらおねだりされちゃうと、つい許しちゃう私も悪いのよね。


...それにしても、今回の里帰りでいろいろな事があったけど...この先どんな事が起こるのかしら。


ディビッドは奇跡を起こせる様になった事、話によると『白の射手』そのものになったって言ってたわよね。


そしてディビッドの祖先って言ってた女の子の言ってた『預言者』の件と『身体が弱い』事を指摘された件も...


「...ティナ?」


「?」


「なんだか難しい顔してますが?」


「...大丈夫よ?ちょっといろいろな事があって感傷に浸っただけよ?」


そう言って笑顔を見せると、ディビッドも同じように笑顔を見せるわ。


「ご家族に会えないのが寂しいんですか?」


「そうね...でも今回はうさちゃんも連れて来たから」


そう...思い出のうさちゃんを今回連れて戻る事にしたの...私の宝物でママの思い出のうさちゃん。


膝の上にそのうさちゃんのぬいぐるみを載せてるの。


ちょっとボロボロになってるけど、タウンハウスに戻ったらお手入れしてあげようって。


大好きだけど悲しい思い出でもあるうさちゃんのぬいぐるみ...でもこれは大切な...大切な宝物なの。


だってこれはディビッドと初めて会った時に持っていたぬいぐるみで...このうさちゃんの組み紐はディビッドが私を忘れないでって預けたものでもあるのだから。



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